日独経済日記

日独間の架け橋となることを目指しています

20240228 仏マクロン大統領のウクライナ派兵案についてのドイツメディアの報道ぶり

マクロン大統領が、西側の地上部隊をウクライナに派遣する可能性について「合意はない」ものの、「何も排除すべきではない」と発言したことについてのドイツメディアの報道ぶりは以下の通りです。

  • マクロン氏自身はロシアに勝利させないためには「戦略的曖昧さ」が必要だと主張したが、即座に同盟国から拒絶され、その「曖昧さ」は何ひとつ残らなかった
  • そして再びNATOのタブー脳死発言/台湾有事への不関与など)に触れたフランス大統領だけが記憶に残った。
  • NATO兵のウクライナ派兵は、どう見てもNATOの直接参戦を意味する。第三次世界大戦の勃発が確実となる。
  • 戦車:レオパルトや巡航ミサイル:タウルスの供給では意見が割れているが、派兵となるとドイツの与野党とも完全に反対で一致している。連邦議会過半数が必要な派兵は実現不可能。ドイツにとっては明確かつ不動のレッドライン。
  • ドイツとフランスの関係が今日ほど悪化したことはない
  • 何がマクロンをそこまで駆り立てているるのか不明ながら、自分の失敗(例えばこれまでのフランスによるウクライナ支援が不十分との批判~下添グラフご参照)から目をそらしたいと考えている可能性はある。
  • ウクライナを安心させながらのプーチンへの警告としては機能しているかもしれない。
  • 一方、タウルスのウクライナ提供を「ロシア本土への攻撃に使われる可能性を技術的に排除しきれないから」と渋るショルツ首相も説得力がない。
  • マクロン氏の大胆な提案は、ドイツ/ショルツ氏により強力な武器供給を促す狙いがあったのかも知れない。
  • 開催中にナワリヌイ氏が殺害されたミュンヘン安全保障会議以来、確かに欧州諸国の危機感は高まっている。
  • トランプはすでにプーチンに対し、自分が再選されたら欧州を助けるつもりはないというシグナルを送っている。
  • この危機的な状況において、独仏が安全保障政策の重要な問題についてオープンな論争をすることは許されない。両国の気質や政治的伝統の違いはあるにせよ、独仏は最終的に団結しなければならない。
  • ウクライナ戦争はいつでもエスカレーションしうるので常に備えが必要。まもなく欧州は以下3つの選択肢から非常に困難な選択を迫られるだろう:①このまま戦争を長期化して、ウクライナ人の命と戦費を失い続ける、②米国抜きでもウクライナを守るため、タウルス露本土攻撃やNATOウクライナ派兵(エスカレーション)に追い込まれる、③(ウクライナはある程度見捨てて)NATO自身を守ることに専念する。
  • 一部のNATOおよびEU加盟国では(NATOではなく)「二国間ベースでの」軍事行動について議論が行われている。ウクライナ戦線が崩壊した場合、戦闘地域への軍隊派遣がロシアの進撃に対する最後の手段となる可能性があるため。
  • 最前線の戦闘員である必要はなく、後方で最新鋭の武器の可能性を最大限に引き出す指導をする技術者や士官であれば、ウクライナ派兵の価値はある。
  • こうしたマインドゲームはNATO内でかなりの不安を引き起こしている。米国を含め、ほとんどの同盟国はロシアとの直接対決を避けたいと考えている。
  • また、ロシアが通常兵器での劣勢を核攻撃で補う可能性があるという懸念も大きい。

 

ウクライナ支援(軍事/人道/金融、単位10億ユーロ)>
~フランスの負担分が少なすぎるとの不満がドイツ国内にはくすぶっている


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