日独経済日記

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20240229 ドイツ鉱工業生産の苦悩

ドイツの鉱工業生産(上図黒線、実質ベースインデックス)は、2023年前年比▲1.2%(2022年▲0.2%)と減少しました。2018年頃から既に長期低下傾向にあり、コロナからの回復後もその低下トレンドが再開しているように見えます。

水準としては2018年のピークから9%も切り下がっている上、昨年後半のマイナスが今年は負の統計上のゲタになるので、今年も▲2%程度のマイナスが予想されます。

鉱工業生産不振の背景には、輸出の不振(特に中国向け)、人手不足(特に熟練者)、資材不足/サプライチェーン障害(コロナ後)、エネルギー価格高騰(ウクライナ戦争後)、高金利、投資不足(不透明な政策への不安、海外移転)などが折り重なっています。

製造業受注(上図灰色線)はコロナ後急回復しましたが、最近は再び冴えない展開が続いています。

但し、コロナ後の受注(下図青線)急増の間も、生産(赤線)は人手不足/資材不足/サプライチェーン障害で思ったように増やせなかったので、受注残(黒線)は大きく積み上がっており、現時点では月商の7か月分積み上がっています。これが当面の景気底割れを防ぐクッションになっています。

 

ちなみに主要産業別に受注と生産の関係を見てみると、以下のような感じになっています。

 

①自動車~コロナ後の落ち込みが深かった分、前年比プラスが続いているものの、ピークからは▲17%切り下がった水準。EV補助金打ち切り、中国EVとの競争激化などもあり、今後も自動車生産の増加は見込みづらい。


②機械~生産は比較的安定しているものの、足元2018年比▲10%の水準。金利上昇による設備投資急減を受けて、受注の急降下が止まらない。

③電機~2018年(コロナ前)を上回る(+6.3%)数少ない主要産業。受注は再エネ関連の大口受注でフレが大きい。

④化学ウクライナ/エネルギー危機に直撃され、2022年生産前年比▲11.9%、2023年▲10.8%と苦境継続。これだけ下がるとかなりの工場閉鎖・企業倒産を伴っているので、もう元には戻らない。


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