日独経済日記

日独間の架け橋となることを目指しています

20240530 株式投資収益で年金給付を補強する改革案についてのドイツメディアの報道ぶり

年金給付を現役所得の48%以上の水準に維持するため、ドイツ政府が株式投資資金を拠出し、その株式投資株式需給改善要因ではあるが、数年来のネタであり市場織込済)からの収益を年金給付の足しにしようとする年金改革案(上図)が閣議決定されたことに対するドイツメディアの報道ぶりは以下の通り:

  • 少子高齢化の進行とともに、退職までまだ遠い若者たちは、増加する高齢者に対する高額な年金を、年金拠出金と税金という形負担させられている。
  • 今の若者たちは、年金制度を支えるため、より長く働かされる(年金支給開始年齢がどんどん引き上げられる)可能性もある。
  • その負担軽減のため、金融市場から得られる潜在的収益を年金保険給付に活用するシステムが、ドイツで初めてFDP主導で創設されつつある。
  • 他の西側先進国ではいくつもの成功事例があり、検討する価値は十分ある(筆者注:日本のGPIFもうまくやっている)。
  • 短期的損益で政治的評価をブラすことなく、長期的な投資戦略で長期的な利益を追求・達成することが重要。
  • しかし、本改革案では年金保険料の大幅引き上げを伴っており、世代間不公平の解消にはほど遠いとの批判も根強い。
  • 若者たちは、選挙でFDPやGreenを支持する傾向が強いが、この年金制度改革案が若者たちの利益にかなっているかどうかは大いに疑問である。
  • 株式市場での運用が、安定的な収益を生む保証はどこにもない。運用がうまくいかなかった時はいったい誰がどうやってカバーするつもりなのか。
  • 隣国オーストリアでは保険料は2割超と高いが、8割超の受給率を実現できている。研究して見習うべきではないか。https://www.nensoken.or.jp/wp-content/uploads/Austria2021.pdf

【筆者注】GPIFと世代基金(本件)の最大の違いは、GPIFは年金保険料の一部を直接運用している(運用による損失が年金を直撃する)のに対し、世代基金は政府が国債で資金調達した資金を株式で運用した後の運用益のみを年金に移転する(損失が年金を直撃しない~運用がうまくいかなかった場合の政治的ヘッジ)という点にある。

 

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