日独経済日記

日独間の架け橋となることを目指しています

20240612 BISデータに見るユーロの地位

https://www.bis.org/publ/qtrpdf/r_qt2406.htm

 

【国際金融総合】

  • 米ドルは国際金融の各市場(右)において引き続き圧倒的シェア(FXは合計200%なので2で割って見る)を有する。
  • ①経済や貿易に占める高い地位、②流動性高く分厚い金融市場、③信頼感の高い財政・金融政策、④通貨の安定性などが評価されている。
  • ユーロは経済規模や貿易量対比でやや大きめのシェアを占めている。
  • 英ポンド、日本円、スイスフランは、概ね経済規模や貿易量相応のシェア。
  • 人民元は完全な兌換性がないので、中国の経済規模や貿易量に比べると利用シェアが極端に少ない。

 

【国際銀行債権①】

  • リーマンショック後、債権残高の増加ペース激減(非銀行部門に流出)。
  • ユーロのシェア(右青)は導入後一時25%まで上昇したが、債務危機後に低下し、足元20%程度で伸び悩み推移。

 

【国際銀行債権②】

  • ユーロのオフショア利用(B赤、貸手・借手ともユーロ圏でない)は米ドル比圧倒的に少ない(ユーロ圏内~仏⇒独など~の貸出はオフショアにカウントされない)。
  • ユーロ圏の銀行から海外の借手へのユーロ建てローン(B黄)が多い(B灰の多くはロンドンの銀行からのユーロ圏向けユーロ建てローン。

 

【総与信(銀行ローン+債券)①】

  • 国際債券市場は(銀行レバレッジ規制強化を背景に)銀行ローンを上回るペースで拡大。ドル債の新興国向けが急増。
  • 米ドル建ての規模が圧倒的で、ユーロ建てはその1/3程度

 

【総与信(銀行ローン+債券)②】

  • 米ドル、ユーロとも急速に政策金利(黒)を引き上げたため、通貨高(青)となり、総融資(赤、特に点線のEM向け)が減速した。
  • 米ドルの通貨高・金利高は、EMのドル建て債務者の頭痛の種となっている。
  • 一方、金利を上げていない日本円は円安が進み、ファンディング通貨と化した。

 

【FX市場】

  • FXデリバティブの残高は、2023年末には100兆ドルを超えた(A)。これは2023年の世界のGDP(105兆ドル)にほぼ匹敵し、世界の貿易額(24兆ドル)の4倍に相当する(参考:FX取引量は1日約5兆ドル、2022年)。
  • シェア(Aの数字を2で割る)は米ドルが45%、ユーロが15%程度
  • ドルは通貨ペア上位9位までを独占(B)。最大のEUR/USDはシェア23%
  • ユーロ圏と国境を接する国(英国、スイス、スウェーデンなど)でも米ドルがユーロより選好されている点は特筆に値する(C)。

 

【EM諸国の対外債務】

  • リーマンショック以降、EM諸国の外貨建て債券による資金調達が急増。
  • ドル建てが6割のシェアを占め、ユーロ建ては1割強(C)。 
  • 過大な外貨建て債務が仇となったアジア通貨危機以降、円のシェアは急低下。

 

【米国以外の銀行の米ドル建てポジション】

  • リーマンショック後、欧銀のバランスシート圧縮が進む一方(A)、EM諸国の銀行の米ドル債務が増加した(B)。
  • 米ドル負債の4分の1は、ドル資金調達市場が厚く、銀行が連邦準備制度理事会FRB)のファシリティを利用できる米国内で計上されているが、残りの4分の3に当たる16兆ドルは、ドル流動性への直接アクセスがより限定的な米国外拠点にブックされている。
  • FEDと海外中銀のスワップ・ラインは、これらの米国外ドル債務のマネージを力強くサポートした。

 

【統計上割り当て不能な米ドル建てFXデリバ債務金額】

  • 米国外の非銀行は、貿易債権や投資をヘッジするためにFXデリバでオフバランスの米ドル債務を立てており、その金額は推計28兆ドル、オンバランスでのドル債務の約2倍に相当(A)。
  • 米国外に本店を置く銀行のオフバランスのドル債務は41兆ドル(オンバランス15兆ドル)と推定されている(B)。

 

欧州議会選後の仏総選挙決定でユーロは対ドルで軟調ながら、円も弱いのでユーロ円は介入後の安値をサポートに小じっかり。

https://tradingeconomics.com/eurjpy:cur

 

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