市場参加者から見れば、ECBが6月9日の理事会まで全く動きそうもないことは想定通りではあるのですが、FEDのインフレに対する機敏かつ果敢な対応との対比が鮮明化してゆく流れの中で、主要ドイツメディアは昨夏以降、ECB批判をどんどんエスカレートさせてきています。
先週の4月理事会後のドイツにおける主な論調は以下の通り(かなり辛辣)です:
- 債券購入プログラムでの債券購入終了が7月なのか9月なのかすら今回明示できなかった。
- その終了後、利上げがいつ始まるのかも明示されず、利上げの具体的軌道はいまだに全く示されていない。
- 「ユーロ圏にとってウクライナ危機は近くの戦争なので、慎重な見極めが必要」という説明は、ポーランド、チェコ、ハンガリーが既に利上げに動いていることを考えると全く説得力がない。
- 少なくとも現時点でユーロ圏のマイナス成長はメインシナリオからかなり遠い。
- インフレがターゲットの4倍近くに達しているにもかかわらず、これほどまで長期間にわたって何もしないというのは理解しがたい。
- 待てば待つほどインフレ期待は悪化し、インフレスパイラルは力強いものとなっていく。
- ECBのマンデートである物価安定(インフレターゲット2%)がこれほどまでに蔑ろにされているため、ユーロの通貨価値と信認は(特にドイツ国内では)完全に失われており、ユーロはもはや21世紀のトルコリラになり下がりつつある。
- 通貨同盟はもはやインフレ同盟と化している。
「ECBの低金利政策を支持しますか?」というオンラインアンケート(3093人が参加)に対し、「全く支持しない」が48.5%、「どちらかというと支持しない」が18%となっており、ドイツ国民の大半(2/3)がいかにECBの様子見スタンスにいら立っていることが判ります。
Leitzins bleibt bei null Prozent: Die EZB missachtet ihr Mandat (wiwo.de)
Nullzinspolitik der EZB: Die irritierende Botschaft der Madame Lagarde (rp-online.de)
5年物インフレスワップかこれだけ上昇しているのにもかかわらず「インフレ高進はエネルギー主導であり、インフレ期待や賃金はまだ大丈夫」と言い張るのはさすがに無理があります。
Inflation tracker: latest figures as countries grapple with rising prices | Financial Times (ft.com)
ECBの影響力が及びにくいドイツ10年物国債利回りは素直に急上昇を続けています。ECBの「ビハインドザカーブ」度合いが高まるほど更に上昇しやすくなると思います。