昨年夏頃から、ドイツで加速するインフレに対して何も手を打とうとしないECBに対するドイツメディアの批判が高まり続けてきましたが、今回のECB理事会結果に対する報道ぶりは概ね以下のような(引き続き批判的な)感じとなっています:
- ECBは債権買取縮小(テーパリング)を加速し、年内利上げの可能性を示唆。
- 「プーチンの戦争」によって、景気に対する不透明感が高まる一方で、インフレについてはもともとあった人出不足、サプライチェーン障害、グリーンフレーションによる上昇圧力に加えて、資源・エネルギー価格の更なる高騰・長期化、大規模財政出動のため、更に悪化することが確実な情勢。
(前者の大幅悪化は不確実な一方、後者の大幅悪化は確実) - 過去に例のないインフレ上昇・長期化による購買力低下で人々は苦しんでいる。
- 債券買取はもともとギリシャ危機をきっかけに、南欧諸国救済のために始まった仕組み。その縮小が終わるまで政策金利に手を付けられないという理屈は本来ないのに、ECBはその議論を避けている。
ECBは一般市民向けにこちらのように極めて分かりやすい(ある意味極端に割り切った)説明サイトを設けて、ECBに対する理解を広める(誤解を解こうとする)努力を続けています。
「一目でわかる私たちの金融政策 - 2022年3月」
Our monetary policy statement at a glance - March 2022 (europa.eu)
上記の報道ぶりは、概ねこちらの内容に沿ったものとなっていました。
【ご参考①】日本語ブルンバーグの報道ぶり
ECB、債券購入縮小急ぐ-ウクライナ戦争がインフレ高める恐れ - Bloomberg
- 今年のインフレ予想は大幅上方修正、戦争は「相当な上振れリスク」
- 債券購入は早ければ7-9月にも終了、利上げ時期の文言は変更
こちらは事前のマーケットの期待(さすがに少しはハト化するのではないか)や、文言の微妙な変化の意味(利上げ時期は債券購入終了の「直後」に代わって、「しばらく後」に実施)などを市場のプロ向けにしっかり解説する(一般向けでない)内容になっています。
ウクライナ危機勃発前の水準まで再び下落し、年内1回以上の利上げをしっかり織込む(今年11月頃には3ヶ月物金利がプラスに転換するという)プライシングになっています。