最近、ドイツで中国脅威論が台頭する中で、人口が同規模の大国インドと今後どうつきあっていくべきかについての議論もメディアでよく目にするようになってきました(上図は経済専門日刊紙ハンデルスブラットの線週末号表紙)。
ドイツメディアの報道ぶりは概ね以下の通りです。
- 中国の台頭が世界を激変させたのと同様に、これからはインドの台頭が世界をさらに変えていくことは間違いない。
- 直近IMF世界経済見通しの中では、世界の経済成長の約半分が中国とインドによって支えられている。
- 国連の計算によると、4月19日にインドは中国を抜いて世界で最も人口の多い国となった。
- しかし、長年にわたりインドは中国と比べると「眠れる巨人」のままだった。
- インドはすでに世界第5位の経済大国であり、EUにとって第10位の重要な貿易相手国でもある。
- しかし、工業化はほとんど進んでおらず、国民の多くがいまだに貧困にあえいでいる。
- そんなインドでも、ウクライナ侵略戦争をきっかけに、EUとドイツにとっての経済的・政治的重要性が大きく高まった。
- G7外相会合で確認した通り、インド太平洋地域の秩序維持やグローバルサウスへの影響力強化のためには、インドとの協力が欠かせない。
- インドが米国と中国に続く第3の政治・経済超大国になれるかどうかは、次の 3 つにかかっている。①経済成長による貧困克服、②経済成長と気候変動対策の両立、③中国を代替する巨大市場への進化。
- 中国による台湾侵攻リスクが現実味を帯びる中、対中依存度引き下げは急務である。インドはサプライチェーン多様化の中における重要な選択肢になりうる。
- 停滞しているEUとインド間の自由貿易協定交渉を前進させる必要がある。独立100周年(2047年)までに先進工業国になるという目標を達成したいインド側のニーズも高まっているので、年内合意の可能性はある。
- インドのGDPの約17%を占める農業での合意が難関。
- 気候変動対策も大きなネック。インドは石炭に大きく依存しているが、既存のCO2排出は全て先進国の責任だとして、インドは2070年までカーボンニュートラルを先送りしている。
- 西側諸国が今後ますますインドを必要とすることが分かっているので、インド政府はそれを最大限利用しようとしている。民主主義国家ではあるが、御しやすい相手ではない。
<関連リンク>
https://www.eeas.europa.eu/sites/default/files/indopac_factsheet_022022jrevised.pdf