日独経済日記

日独間の架け橋となることを目指しています

20230418 イタリア銀行セクターについてのドイツメディアの報道ぶり

 

次に欧州債務危機が発生する場合には、イタリアのソブリンか銀行セクターが震源地になる可能性が高いのですが、先月大騒ぎになった米欧銀行不安でイタリア銀行セクターが危うくなっているということはなさそうです。

ドイツの各種メディアのイタリア銀行セクターに関する最近の報道ぶりは以下のような感じ(概ね楽観的)です。

  • イタリアの銀行は、2022年決算でほぼ軒並み過去最高益を記録している。
  • 経費率は64.2%と、ドイツやフランスの金融機関よりも良好(低水準)。
  • 2023年第1四半期の業績も悪くなさそうな感触。
  • 欧州金融危機以来の問題児であるモンテ・デイ・パスキ・ディ・シエナ(MPS、イタリア5位の大手行)は、昨年25億ユーロの増資に成功し、人員削減/リストラ原資を確保した。そろそろ買い手が見つかるかもと期待されている。
  • イタリアの銀行は、欧州金融危機以降、資本と流動性をしっかり増やし(CET1比率14.7%)、国債保有不良債権を大幅に削減してきた。
  • ユーロ圏経済が予想以上に安定しているだけでなく、金利も正常化してきた。これも銀行セクターにとって心強い追い風。
  • 過去10年間で、12千店舗が閉鎖され(全体の3分の1強)、コスト削減も進んでいる。
  • 金利期間中、各行はビジネスモデルを、バンカシュアランス、資産運用、中堅企業/ファミリーオフィス向けのアドバイザリーサービスなど、より収益性の高いセグメントにシフトしてきた。一部大手行はデジタル化にも注力。
  • 今後念頭に置くべきリスクは、大幅なインフレ/金利上昇(スプレッド拡大含む)と、ウクライナ戦争起因の経済悪化(特に建設業、農業、零細企業での不良債権急増)。
  • 小規模銀行や、裁判を抱えるMPSは相対的にリスクが高い(筆者注:真っ先にやられるとすればMPSなので監視する価値あり。下添リンクご参照)。

 

<関連ご参考>

Rating - Banca MPS – ENG

モンテ・デイ・パスキ・ディ・シエナ銀行 - Wikipedia

jp.reuters.com

 

イタリア銀行セクターを見張っておくには、上記MPSの格付けと、以下の二つをチェックするのがよろしいかと思います。

 

①独伊10年国債金利スプレッド~300bp付近は要警戒

https://www.investing.com/rates-bonds/de-10y-vs-it-10y

 

②大手行Intesa Sanpaolo の5年CDS~200bp付近は要警戒

https://www.investing.com/rates-bonds/intesa-sanpaolo-cds-5-year-eur-historical-data