日独経済日記

日独間の架け橋となることを目指しています

20230831 不景気でもドイツの雇用は揺るがず

 

先ほどドイツ連邦雇用庁から8月のドイツ雇用統計が発表されました(米雇用統計と違って賃金データは含まれていないので、インフレに対する直接的影響は読み取れないという点についてはご了承ください)。


●市場が最も注目する季節調整後失業者数前月比増減は18千人と市場予想(+10~15千人)より気持ち弱め(失業者数多目)の内容でした。



●連邦雇用庁は「景気低迷で雇用も足踏み」とややネガティブ目に総括しています。

景気悪化が続く中、人手不足のため積極的人減らしには慎重で、就業者の減少は起こりにくいものの、失業者数に上昇圧力がかかり続けているという微妙な状態が続いています。


●失業率は5.7%と、前月の予想外の反落分を戻した格好ですが。。。。

 

国際比較可能なILO基準ベースでは2.9%で横ばいと、ダントツに良好な状態を維持しています。



就業者数(1か月遅れなので7月分まで)は、毎月コンスタントに上昇し続けており、6月は前月比+1千人、7月は+15千人と、現在45.92百万人となっています。

 

●これまでインフレに食われて深いマイナスだった実質賃金も、最近ようやくプラ転してきた(下図)ので、上記の高水準の就業者×インフレを上回る賃金上昇が今後は個人消費を改善するものと思われます。



●雇用の先行指標ハードデータである求人数(残高:上線)は、まだ比較的高水準(コロナ前並み)ながらもじりじりと減少が続いています。
求人の新規流入(下線)もやや弱含みに推移していますので、警戒して見ています。


オンライン求人数は減少傾向がいったん止まり、比較的高水準を維持したまま横ばいで推移しています。


●雇用の先行指標であるIAB雇用バロメータ(青~3か月後の見通しを示唆)が中立(100)より上にあることを確認しつつも、以下のようにまだら模様(就業者は減りにくいが、失業者は職を見つけにくい)の展開となっています。

 「就業者数」(緑)~引き続き堅調

 「失業者数」(橙)~増加圧力


●もうひとつの有力雇用先行指標である、ifo雇用バロメータは弱含み横ばいとなっています。

 

操短(勤務時間と給与を減らして雇用を維持するしくみ~給与は公的支援で一部補充される)については、コロナによる急増分をほぼ完全に解消した後、低位安定推移を続けています。

 

●製造業の受注残(黒)は月商の7.2か月分も積み上がっているので、多少新規受注(青)が凹んでも、生産(赤)を減らす必要がないので、操短も増えづらいのだと思われます。

 

●実際に人手不足感(グラフ上ほど不足感大)は高止まりしており、簡単に操短したり解雇したりしづらい状況と思われます。

 

企業倒産も下図の通り非常に低水準で、今後急増も見込まれないことから、ドイツの雇用情勢は、多少のマイナス成長に見舞われたとしても、全般的には安定的状態が続くものと思われます。


<データソース>

https://tradingeconomics.com/germany/unemployment-rate

https://statistik.arbeitsagentur.de/Statistikdaten/Detail/202308/arbeitsmarktberichte/monatsbericht-monatsbericht/monatsbericht-d-0-202308-pdf.pdf?__blob=publicationFile&v=1

https://iab.de/daten/iab-arbeitsmarktbarometer/

https://www.ifo.de/fakten/2023-08-29/ifo-beschaeftigungsbarometer-minimal-gesunken-august-2023

Arbeitskräfteknappheits-Index - IAB - Institut für Arbeitsmarkt- und Berufsforschung

 

 

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