ECBから欧銀の財務状況について分析コメントが出ていますので、そのエッセンスをご紹介します。
【私なりの結論】
金利上昇により欧州の銀行収益は大きく改善したが、
①成長性が乏しい/(課税リスクも含めて)不透明、
②金利上昇によるディスカウントがきつい、
③これからは貸倒損失が心配な局面
ということで株価の低迷が続いている。
●2022年初以来、欧銀株価(青線)はほぼ横ばい。
金利上昇で収益改善(黄)も、ディスカウント率上昇による評価減(橙)でちょうど打ち消されている。
リスクプレミアム(緑)は、今年春の銀行危機で消滅。
●Cost of Equity (COE)は禁煙どんどん上昇。足元5~7%で推移。
大半は無リスク金利(青)ながら、貸倒れリスク(橙)も意識されている。
●財務ファンダメンタルズの改善により、2022年のCOEは約0.6%ポイント押し下げられているものと推定される(左)。CET1比率の改善がその半分0.3%に寄与(青棒)。
レバレッジの低下(右)や、コスト効率の改善/資産の質の改善(央)はCOEを押し下げる。
●銀行の株価純資産倍率には、収益性や資本以外の要因、例えば利益の分配政策や税制が銀行の評価に大きな影響を与える。
銀行はCOEに見合うリターンを得るための成長機会が限られているため、投資家への利益配分を高めることがバリュエーション改善につながりやすい。
しかし、配当課税リスクは、キャッシュフローを内部再投資する企業と比べて配当する企業のバリュエーションを押し下げる。
【ECBの総括的コメント】
- 低迷する銀行株バリュエーションと高いCOEは、実体経済への貸出コストを上昇させると共に、銀行の資本調達を難しくする。
- 銀行の収益と資産の質の見通しに関する不確実性は、イタリアの銀行税引き上げの発表に伴う配当の持続可能性への懸念と相まって、バリュエーションの低迷に寄与している。
- 投資家から割安に評価されている銀行は、必要な時に新たな資本を調達することが難しくなる可能性が高く、長期的には金融の安定性に悪影響を及ぼす可能性がある。
- 貸出を支えるために必要な資本は貸出金利によって支払われるため、評価の低下は実体経済への融資条件の厳格化に直結する。
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