日独経済日記

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20240422 ECBによるユーロ圏住宅投資分析

www.ecb.europa.eu

本日ECBから発表されたユーロ圏住宅市場に関する分析レポート「ユーロ圏の住宅投資と住宅使用者コスト」(上記リンク先)のエッセンスは以下の通り:

  • ユーロ圏の住宅投資は、2022年第1四半期から2023年第4四半期にかけて約4%減少。特にドイツとフランスで大幅に減少。
  • 住宅投資減少の背景は、パンデミック中の建設コスト急上昇と、長期金利の大幅上昇/銀行の審査基準厳格化。
  • 住宅使用者コスト:以下6つの要因を勘案したネットコスト(収益は差し引く)の対住宅価格比率と住宅投資の関係を今回分析
    ①債務返済コスト、②機会損失(住宅以外の資産への投資から得られたはずの金利収入など)、③予想されるキャピタルゲイン、④LTV比率(債務返済コストに影響)、⑤各種税効果(固定資産税、債務返済に対する税控除など)、 ⑥保守および修理関連費用など
  • 今回の利上げ局面で、ドイツ(赤)の上昇が目立つ

  • 寄与度分析をすると、住宅使用者コストの最近の上昇は主に、期待キャピタルゲイン要因(青)のマイナス寄与(住宅価格値上がり)からプラス寄与(同下落)への転換と債務返済コスト上昇(赤)によって引き起こされている。

  • 国別に見ると、ドイツでは特にキャピタルゲイン効果(青:住宅価格見通し悪化に伴うコスト押し上げ)が大きい。

  • ユーロ圏における住宅投資と住宅使用者コストの水準(変化率ではない)には比較的強い正の相関関係がある(住宅使用者コストの水準が高い局面で住宅投資が活発化しやすい)が、国別に見るとイタリアではかなり乖離が大きくなっている。

  • ユーロ圏の住宅投資は、住宅使用者コストからモデルが示唆する水準を上回っている。今後住宅投資がモデルに収斂する方向で減少する可能性あり。
  • (利下げ局面間近で)債務返済コストは安定しつつあるが、キャピタルゲインはさらに減少する(コスト押し上げ圧力となる)可能性があるので、住宅使用者コストはまだ上昇するかも知れない。

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