https://scoperatings.com/ratings-and-research/research/EN/176796
ドイツの格付機関スコープ社(@ベルリン)が本日発表したドイツのソブリン格付についてのコメントのエッセンスは以下の通り(経済低迷長期化でも財政が極めて健全なのでAAAは当面安泰という結論):
- 短期的に経済停滞や財政運営上の問題はあるものの、ドイツの格付け(AAA/安定的)に懸念なし。
- コロナ以降の5年間、累積ベースでほぼゼロ成長というドイツ経済の停滞は、歴史上前例がない。
- GDP(2019年末=100)の回復力の面で、ドイツ(赤線)は他のヨーロッパ諸国やAAA諸国に比べて明らかに見劣りしている。
- 実質GDP成長率は今年+0.2%、来年+1.4%、中期的な潜在成長率は+0.8%(5大研や5賢人より高め)と予想。
- ドイツ経済がエネルギー輸入と世界貿易(輸出)に依存していることを考えると、これらの成長見通しは地政学リスクに対して極めて脆弱。
- 適切な改革と、思い切った財政出動による純投資増加がなければ、回復が加速する可能性は低い。
- 民間部門の成長を促すためには、より野心的な官僚主義の削減が必要。煩雑な許認可手続きや各種規制対応などの官僚主義による企業コスト負担は年650億ユーロ~GDPの約1.6%~と言われている。
- 熟練労働者不足対策も重要。幸いドイツの求人率は欧州の中で高い方(EU平均の2.5%に対し3.9%)。母親の約 66%/子供のいない女性の35%がパートタイム。労働投入引上げのポテンシャルは結構大きいはず。移民活用、家族に優しい政策、雇用促進のための投資が有効。
- これらを実現するには超党派の政治的合意が必要で、来年の連邦予算編成をめぐる夏場の交渉が非常に重要。
- ドイツ憲法裁判所の債務ブレーキ(新規借入をGDP比▲0.35%以内に抑える憲法上のルール)に対する厳格な解釈(昨秋の予算違憲判決)により、公共投資抑制⇒成長抑制となっているが、債務ブレーキにはある程度の修正(柔軟化)が必要。
- 政府債務残高は2023年の64%から2028年までに59%に低下すると予想されており、ドイツには本来財政出動余力がたっぷりある。
- ドイツの格付に対する短期的なリスクは、ウクライナ戦争激化の可能性、米大統領選後の不確実性、米中対立激化など地政学リスク関連がメイン。
- 長期的なリスクは、脱炭素社会への移行やと少子高齢化に伴う歳出増加圧力。
- 上記の両方に対して、純投資増加と潜在成長力向上は重要。
★この独Scope社は昨秋にECBから外部信用評価機関として採用されている。
<日独経済日記>