日独経済日記

日独間の架け橋となることを目指しています

20230918 ドイツ住宅業界の苦境継続

https://www.destatis.de/DE/Presse/Pressemitteilungen/2023/09/PD23_369_3111.html

 

住宅着工許可件数は、上図の通り急減を続けており、7月は21千件:前年同月比▲31.5%、年初来累計ベースでは前年同月比▲27.8%と3割ダウンのペースで推移しています。今年の住宅販売件数は前年比4割減くらいで着地すると予想されています。

 

8月(直近)の建設業(住宅+商業用+土木)におけるifo景況指数のは以下の通り、総合(赤)、現況(黒)、期待(青)共、深くマイナス圏+一段と悪化傾向にあります。

ifo Geschäftsklimaindex fällt (August 2023) | Fakten | ifo Institut

 

(当然ながら)許可件数と並行してに住宅の新規受注も大きく減少しています。

 

去年くらいまで住宅価格は2割程度過大評価かも知れない(バブルというほどではない)と言われつつ大都市中心に上昇を続けてきました(右)が、ECBの強烈な利上げ後、1割程度下落しています(左)。

 

その価格修正(正常化)の結果、住宅価格/所得(青)や住宅価格/家賃(緑)といったavailability指標は大きく改善していますが、住宅ローン返済金額/所得(赤)だけは金利上昇のため改善していません。

 

 

ドイツの住宅ローンは長期固定金利物が多い(上から順に、金利据置期間10年超/5~10年/1~5年/変動)ので。。。

 

新規取組住宅ローンの金利は長短とも4~5%に急上昇していますが、雇用が非常にしっかりしていることもあり、既存の住宅ローン債務者へのダメージは限定的です。

 

マクロ的に見ても住宅ローン残高(橙)がGDP比(上)でも可処分所得比(下)でも特段ストレッチしている感じではありません

https://www.bundesbank.de/de/statistiken/indikatorensaetze/indikatorensystem-wohnimmobilienmarkt/indikatorensystem-zum-wohnimmobilienmarkt-775496

 

 

これらをまとめると、以下のように総括できると思います。

  • 住宅供給業者は、もともと原材料価格高騰、人手不足、官僚主義的手続きの煩雑さで困っていたところに、ECB利上げ⇒住宅ローン金利急騰に伴う需要急減が加わって苦境に陥っている。
  • ドイツ政府は住宅不足/家賃高騰問題を解決するため、数年前から年40万個の住宅供給を目標にしているものの、半分くらいしか達成できそうもない。
  • 来年以降はエコ暖房を義務付ける「暖房法」が始まるので、コスト面と手続きの煩雑さの両面から更なる逆風となる。
  • これから住宅を買おうとしていた人たちは、1割程度の住宅価格の多少の低下よりも住宅ローン返済負担増(ざっくり、価格1割減×金利3%上昇×10年としても、3割弱の支払金額増)の方がはるかに厳しく、マイホーム購入計画を断念せざるを得なくなっている(需要急減)。
  • 但し、既に住宅を買って住宅ローンを返済している人たちの多くは、特段苦しくなっているわけではない。