日独経済日記

日独間の架け橋となることを目指しています

20211022 ドイツ信号機連立交渉の3大争点

12月中旬の政権発足を目指す信号機連立交渉では、以下の3大争点について今後約6週間以内に具体的な落としどころを見つける必要があります。
11月10日に予定されている22部会中間総括でその進捗具合を確認したいと思っています。


①財政(各政策の資金調達面) ~FDPが重視

「予備交渉」では「(高所得者や企業に対する)増税なし」「債務ブレーキ尊重(安易に財政出動しない)」で合意しましたが、Greenが強く主張する、今後10年間毎年500億EURの環境関連投資が実現できるような財源はほぼ見当たりません(大麻自由化がうまくいけば年27億EUR程度の増収になるというのが期待できる程度です)。昔日本の政権交代時にブチ上げられた時のように「行政の無駄を徹底的に省く」ということになっていますが、有意な規模で資金が捻出できるとはとても思えません。


②気候変動対策 ~Greenが重視

「予備交渉」では「高速道路に速度制限を導入しない」ことが決まったくらいで、事実上(少なくとも我々がある程度身構えられる程度には)何も決まっていない、というのが現状です。脱石炭にいくらかけて、何年前倒しするのか。太陽光パネル風力発電をもっと急速に普及させるために具体的にどうするのかを決めるのはこれからです。CO2税をどのように設定するか(あまり急に高くすると産業界の国際競争力が削がれます)、排出権取引をどのように機能させるかも大きな焦点になりますが、現時点で落としどころは全く見えていません。


③ポスト配分 ~連立交渉最終局面でキナ臭くなる

SPD首相候補のショルツ氏を首相とすることは確実、Green共同党首のハーベック氏(またはベアボック氏)を副首相と位置づけるところまではほぼ確実で、これらは争点にはなりません。しかし、欧州政治における重要度も高いスーパー省庁であるドイツ連邦財務省のポストが、下馬評通りリントナーFDP党首に与えられるかどうかについてはまだまだ微妙な情勢です。Greenのハーベック氏を副首相兼財務相とするのがより自然ですし、環境関連省庁(①環境・自然保護・原子力安全省、②交通・建設・都市開発省、③経済エネルギー省)をリントナー氏を含む複数のFDP大臣が抑えることで睨みを利かせるという選択肢もあり得ます。
新設が検討されている、④気候変動省(気候変動関連政策に拒否権を持たせる)、⑤デジタル省の位置づけや、既存省庁との棲み分け・調整も含めて大変そうに思います。

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