【政権運営における注目点】
- ショルツ首相は、当初メルケル路線を概ね継承するものと予想されていたが、環境、外交でGreen、経済、財政でFDP、社会的公平の実現ではSPD内左派に配慮する必要がある上、その後ウクライナ危機が勃発したこともあり、多方面で既存路線からの脱却を迫られている。
- 目先はウクライナ危機対応(停戦に向けた外交努力、武器提供、難民対策など)が注目を集めやすいが、ロシア依存是正とからめた中長期的エネルギー/環境政策と安全保障政策は難度が格段に上がっており、首相/政権の真価が問われる。
- 3党間のパワーバランスは下表の通りで概ね均整が取れている。3党で連邦議会全736議席のうち56.5%(半数+48議席)を占めており、基本的には安定的政権運営が期待できる。 但し、エネルギー問題と安全保障問題 では特に厳しい政策運営を迫られるため、 政権内の不協和音を生みやすい。
【政権発足以降の主な実績と評価】
- 政権発足直後は再加速するコロナ(オミクロン)対策に注目が集まった。ラウターバッハ保健相は医療崩壊を防ぎ、大胆な規制緩和を実現したが、次の冬に備えるためのワクチン義務化には失敗。4月時点でドイツの新規感染は高止まりしており、コロナ克服はまだまだ先。
- ウクライナ危機勃発後は、停戦実現とエネルギー確保に向けた外交努力に奔走。終始厳しい対露スタンスを貫くベアボック外相が評価を上げる(党として対露・対中強硬スタンスを明示してきたGreenの主要閣僚が人気化する)一方、SPDの過去の親露政策の影を引きずり、歯切れの悪いショルツ首相は批判を集めやすい。シュタインマイヤー大統領(SPD)のウクライナ訪問が拒絶されたのも痛手。
- 以下の新方針3つは、ドイツ政治における歴史的大転換と評価されている: ①1000億ユーロ(約135兆円)の特殊基金(債務ブレーキにヒットしない)を連邦軍装備強化などに充当する。
②国防費を国内総生産(GDP)比で2%以上へと大幅に引き上げる。
③ドイツからウクライナへの武器直接供与を可能にする(但し、戦車や重火器の供与については政権内でも意見が大きく割れている)。 - 気候変動関連政策の具体的内容については、2022年中に「即時行動プログラム」を策定することになっているが、ロシア問題が上乗せされて難度が上がっており明確なビジョンは出ていない。ロシア依存度が5割超で運搬・貯蔵・代替が困難な天然ガスの不足が最大のリスク。
- その他、年金支給水準の引き上げ、最低賃金12ユーロの導入等を実現済。ウクライナ難民の迅速な受け入れ/キャパ拡大も進行中。
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