日独経済日記

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20230716 恒例の夏の首相記者会見についてのドイツメディアの報道ぶり

 

ドイツの首相が夏季休暇に入る前に毎年実施される夏の首相記者会見についてのドイツメディアの報道ぶりは以下の通りです。ショルツ首相の政治スタイルが浮き彫りになっていてなかなか興味深いと思いましたのでご紹介します。

  • 夏休みを前に、ショルツ首相は極力楽観的な発言に努め、終始明るく、上機嫌だった。
  • 国民が将来に対して極力前向きになれるような語り方をするのは、彼の統治スタイルでもある。
  • しかしメディアの期待は今回あまり高くなく、会見開始時点で会場にはやや空席が目立った。
  • 新対中戦略については、過剰な国家管理に対する企業の懸念を払拭しようと努めた。
  • 冷静に見れば、ショルツ首相のこの2年はそれほど悪いものではなかった
  • ウクライナへの大規模な軍事援助を支持する国民の大半を結集させることに成功した。コロナ、ガス危機、ウクライナ難民等への対応を含め、首相は危機管理者として立派に機能している。
  • マイナス面は連立政権の内部対立にある。ショルツ首相はこの政権内の内紛を全くコントロールしようとしていないように見える。
  • 政策策定プロセスでリーダーシップや言葉の力を発揮するのではなく、結果的に優れた政策が打ち出せればよいと割り切っている。
  • こういった首相の冷静さが、あらゆる危機的状況下で違和感を醸し出している。
  • 確かにリーダーはいたずらにパニックを広めるべきでない。しかし、ショルツ首相の冷静沈着な統治スタイルが適切かどうかについては疑問がある。
  • 最近の世論調査でのAfD台頭(グラフ添付)について首相は、政府内の内紛のせいではなく、不透明な時代(特に地政学面で)における将来に対する不安の高まりが原因と捉えている。
  • 「AfDが次回総選挙で前回よりも良い成績を収めることはない」と国民に約束したものの、任期残り2年で未来への信頼を取り戻すのは容易でない
  • ウクライナがロシア軍を追い出すことができるかどうかは、誰にも分からない。
  • 次回米大統領選でトランプ氏がホワイトハウスに復帰するという悪夢を回避できるかどうかも分からない。
  • ショルツ首相は、もっと誠実な政治論争に努めるべき。
  • 社会の分断は誰も望んでいない。連立与党3党(SPD、Green、FDP)は夏季休暇の間に議論を深めておき、これ以上表舞台での対立的議論を避けるべきである。
  • 暖房法(新築住宅に再エネを義務付ける新法)は、政府が犯す誤りのグロテスクな典型例だった。
  • 気候変動対策のために大胆な政策を断行するのは重要だが、無意味に議論を迷走させていたずらに対立をあおってしまった。
  • 家庭における気候変動対策は意外と高くつきそうだという恐怖が多くの人々を不安に陥れ、AfDの人気を高めてしまった。
  • ショルツ首相は将来の気候関連法を国民投票過半数をもって策定したいと考えており、これは極右ポピュリストに対する正しい処方箋となるだろう。

 

★最近は与党3党(赤:SPD、緑:Green、黄:FDP)とも極右のAfD(青)に支持率で見劣りする状況が続いています。現政権に対する不満と将来に対する不安の高まりの結果と広く解釈されています。

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