日独経済日記

日独間の架け橋となることを目指しています

20240610 欧州議会選についてのドイツメディアの報道ぶり

欧州議会選結果についてのドイツメディアの報道ぶりは以下の通り:

  • 【今回の選挙における最も重要なインプリケーション】
    プーチンシンパであるワーゲンクネヒト氏の台頭
    ②スキャンダルをものともしないAfDの躍進(特に東独)、
    ③ショルツ政権崩壊リスクの高まり(特にFDP)、
    Greenの政策に対する拒絶反応顕在化。
  • 【今回の選挙における主な争点】
    ①難民問題
    ②ロシア/ウクライナ問題
    ③環境問題/脱炭素
  • ドイツ政府にとってはほぼ事前の予想通りの悪い結果となった。
  • 欧州議会選挙は常に、EU全体の政治というよりは各国国内政治に大きく左右される。地域固有の問題に大きく左右される州議会選や市町村選よりは、欧州議会選の方が遥かにドイツ国政に対する評価に直結している。
  • SPD(上図赤)は前回の惨めな結果をさらに▲1.9%pt下回り13.9%(ドイツ分96議席中わずか14議席)と過去最悪の着地となった。
  • 敗因が筆頭候補のバーリー氏ではなく、ショルツ首相に対する不満にあることは明白。
  • SPDへの支持率がこれほど低いと、ショルツ氏がドイツの首相としてふさわしいかどうかすら疑わしくなってくる。
  • しかし、最大のライバルであるメルツCDU党首との相対評価世論調査)では、ショルツ氏はいつもメルツ氏を上回っている。
  • Green(緑)は大躍進した前回比▲8.6%ptという壊滅的な惨敗を喫し、11.9%/12議席に終わった。
  • FDP(黄)は5.2%/5議席と比較的健闘したように見えるが、前回の惨敗から横ばいを維持しただけ。
  • 信号機連立政権SPD+Green+FDP)に対する支持率合計はわずか31%と、全体の3分の1未満にとどまった。
  • たびたび政権内不和の原因となっているFDPが、本選挙結果をどのように捉え、行動し始めるかに注目。政局流動化の可能性がある。
  • CDU/CSU(黒)は30%/29議席で第1党の座を確保したが、前回比ではわずか+1.1%ptであり、連立政権の低下分▲10.7%ptをほとんど取り込めていない
  • AfD(青)は直前のスキャンダル多発にもかかわらず健闘し、15.9%/15議席を獲得。旧東独地区の大半で第1党となった(下添)。
  • 但し、欧州選挙と並行して行われたチューリンゲン州9か所での市長決選投票では、他党が団結して立ち向かったためAfD候補は全て敗退した。
  • 今回の選挙最大の勝者はサーラ・ワーゲンクネヒトBSW(紫)党首。この極左ポピュリズム新党は6.2%/6議席を獲得し、AfDに続く第2の抗議政党としての地位を確立した。
  • AfDとBSW両党の躍進は、特に移民政策におけるショルツ首相に対するレッドカードと言っていいかもしれない。
  • 中道政党は今、ポピュリストを倒すためにはもっとポピュリストにならなければならないかもしれない、という不愉快な課題に直面している。
  • 多くの国民は気候保護を望んでいるものの、あまり大きな痛みには拒絶反応を示す。難民たちに避難場所を与えてあげたいと考えているものの、不法入国者全員を受け入れたくはない。Green内部がこの点で割れ始めている。
  • フランスでもルペン氏率いる極右が躍進した。中道派陣営の敗北を受けて、マクロン仏大統領はフランス国民議会解散(6月30日選挙)に踏み切った。
  • 欧州全体を見ると、中道右派連合EPPが全720議席の約4分の1にあたる186議席を得て第1党の座を防衛した。
  • 多数派工作に多少は苦労するかも知れないが、フォンデアライエン委員長続投の可能性高まる
  • しかし同氏は在任期間中、市民たちの欧州への熱意を高めることには失敗している。彼女を適任と考えない人たちも多い
  • 欧州議会の新たな任期となる今後5年間、世界的な課題に対してEUを団結させることはさらに困難になりそうだ。
  • ドイツにとっての経済的影響は、①(マクロン議会解散をその背後にある財政悪化懸念を材料とする)ユーロ安、②環境政策の後退(少なくとも難民、地政学リスク対応、産業立地改善が優先される)、③財政規律を巡るSPD&Green vs FDPの対立激化。

 

●旧東独地区の大半でAfD(青)が第1党となっている。

 

EU全体の暫定結果~EPP(中道右派、濃い青)が第1党の座を維持したため、フォンデアライエン委員長続投の可能性高まる。


●ドイツの投票率65%は他国比かなり高い。


<日本語報道例>

jp.reuters.com

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