日独経済日記

日独間の架け橋となることを目指しています

20220601 ドイツ4月小売売上はそんなに悪くありません

今朝ドイツ連邦統計局から4月小売統計が発表され、前月比では実質▲5.4%と予想を大きく下回るとんでもなく弱い数字であるかのように報道されていました。

Germany Retail Sales MoM - May 2022 Data - 1994-2021 Historical - June Forecast (tradingeconomics.com)

 

小売りに限らず、ドイツの統計は(アメリカの真似をして)前月比でみても振れが大きすぎてあまり意味がありません。日曜や祝日は工場や小売店が全部閉まっており、経済活動が激減するため、イースター休暇が2日あった今年4月の数字が強いわけがありません(カレンダー/季節調整でも調整などし切れません)。

こういう時はある程度まとまった期間で比較するに限ります。ドイツ連邦統計局もその辺はちゃんとわきまえてくれており、1~4月の累計ベースでの数字(前年同期比%)を示してくれています。

これによりますと、小売全体の調子は、実質+3.2%/名目+8.4%とそれほど悪くないことが判ります。

中でも、衣料・靴・皮革製品は、実質126.5%/名目128.6%と絶好調で、リベンジ消費が発生している(しかも、名目と実質の差が小さいのでインフレによるダメージも少ない)ということが判ります。

Einzelhandelsumsatz im April 2022 um 5,4 % niedriger als im Vormonat - Statistisches Bundesamt (destatis.de)

 

ちなみにドイツ連銀は、季節調整済名目値をインデックス化して下図のような形で見ています。4月が単月で弱いことに変わりはありませんが、(イースターがなかった)3月が強く見えている反動であり、均してみれば昨年よりずっと高水準で推移していることが視覚的に確認できます。恐らく5月分は4月の落ち込みの反動でかなり強めに出るものと思われます。

Umsätze | Deutsche Bundesbank

 

上記のような背景をよく理解した上で、以下のような(表面的な英文)マーケットコメントに踊らされないようにすることが大切だと思います。

>Retail sales in Germany slumped 5.4% month-over-month in April of 2022, the biggest fall in a year and much worse than market forecasts of a 0.2% decline, on rising prices, especially for food, and as lockdowns in China exacerbated supply problems.