掲題テーマに関するバイエルン州立銀行/調査会社Prognosの分析・提言のエッセンスを以下ご紹介します(メアド提供と引き換えにpdf入手可能)。
●ウクライナ戦争、米中対立激化、パンデミックをきっかけに、グローバリゼーション逆流のリスクが高まっている。グローバリゼーションのメリットをフルに享受してきたドイツにとっては試練の時。
●ドイツの財輸出はGDPの約4割(世界平均は25%弱)を占めており、輸出依存は明白。
●昔は世界のGDP伸び以上に財輸出が伸びていた(下図上方向)が、近年はそうでもなくなった。(下図:財輸出伸び率-グルーバルGDP伸び率)
●財輸出の伸びは消費財(灰色)主導。グローバル化を主導してきた中間財(紺)、資本財(青)は近年あまり伸びなくなってきた。
●「Offshoreing」から「Nearshoring(あるいはFriendshoring)」へのシフトは今のところまだデータで確認できるほどではない。
(ドイツ企業の中間財輸入元:上からEU、その他欧州、北アフリカ・トルコ、その他)
●ドイツのサービス輸出(運輸、金融、観光、エンタメなど)は比較的堅調(GDP比9%程度)が続いている
●ドイツGDPに対する純輸出の寄与(灰色)は近年かなり小さくなっている。
●経常黒字に占める貿易黒字(紺)の割合は低下し、第一次所得収支(灰:投資から得られる利子・配当など)の黒字が増えている(日本と同様)。
●世界の特許数は着実に増えているが、その中で国境を越えた協力に基づくもののシェア(青線)は年々低下している(特に中国で顕著:下の図)。
●国際資本移動(紺:直接投資、青:証券投資、灰:その他投資)はグローバルGDP比8%程度でほぼ横ばい推移。
●EMへの直接投資(青)の対GDP比は減少傾向(紺:全世界、灰:先進国)。但しEM向けSDGs関連投資は増えている模様。
●ドイツからの対外直接投資はGDP比2.5~5%でおおむね安定。ドイツへの海外からの直接投資流入には波アリ(中国からの大口を時々止めたりしているので)。
●国際通貨体制が大きく動く兆しなし。
(外貨準備に占めるシェア:USD6割、EUR2割、人民元数%)
●米利上げはEMの金融環境(薄青)をまださほど悪化させていない。
●ここ10年くらいはグローバル化の進展は停滞気味。サプライチェーン障害と地政学リスクへの警戒感高まりがその主因。例えば半導体は、コロナ、自然災害、政策/制裁、事故、戦争などに次々と苦しめられた。
●ドイツの対露輸出(左)輸入・(右)も激減。
●今後10年を見通しても、地政学リスク対応でグローバル化はさらに押しとどめられ、しかも米中2大国の政治的意思に大きく左右される展開になりそう。良くても現状比横ばいで、環境悪化に備える必要あり。
●ドイツとしては、①対中国での販売/調達(サプライチェーン)と、②エネルギー確保の両面から対応する必要あり。
●ドイツのグローバル企業としては、サプライチェーンの安全確保(対中依存引き下げ)に加えて、新しい地理的市場開拓(ベトナム、ブラジル、エジプト、ケニアあたりが有望)、成長セグメントでの革新的な輸出製品開発、国内市場の可能性(特に気候変動対策関連)開拓、などが重要。
●ドイツ政府としては、包括的投資/自由貿易協定の拡充、(特にエネルギー集約型産業の安定稼働を可能にするような)安価かつ低炭素のエネルギ-確保の枠組み整備が重要。