日独経済日記

日独間の架け橋となることを目指しています

20230220 持続的なエネルギーコスト高がドイツ産業立地の脅威に

rp-online.de

 

デュッセルドルフの地元有力新聞、ライニッシェポストに「ウクライナ危機(まもなく1周年)によってドイツの富がどれくらい失われたか」という興味深い記事が出ていましたのでそのエッセンスを簡単にご紹介します。

 

  • 2022年の実質GDPは+1.9%と、ウクライナ戦争開戦前に予想されていた3.7% の約半分にとどまった。
  • 供給ボトルネックとエネルギー価格急騰がその主因。
  • 人手不足を恐れて多くの企業が雇用を維持したため、幸い失業や操短はほとんど増えなかった。
  • インフレの効果で税収は急増しているが、100 万人の在独ウクライナ難民のケア、ウクライナへの軍事・人道支援、ドイツ自身の国防強化、ドイツのエネルギー確保などのためにどんどん消えていく。
  • アドリアンDIHK(商工会議所)会頭:「戦争開始から今年末までの間に、約1,600 億ユーロ(GDPの4%相当)が失われる。ドイツ人1人あたり約 2,000 ユーロの損失。持続的に高いエネルギーコストは、産業立地としての脅威。例えばガソリン価格は米国の3 ~5倍、ドイツ中小企業の電気代はフランスの約4倍にもなっている。ヒアリング対象企業の85%が、エネルギーと原材料の価格高騰は大きなビジネスリスクと捉えている。」
  • フラッチャーDIW(ベルリン研)所長:「2022 年の経済損失は1,000 億ユーロ(GDPの2.5%相当)で、今後も増加し続ける見込み。ドイツはロシア産エネルギーへの依存度が高く、エネルギー集約型産業の割合が高く、輸出とグローバルサプライチェーンに大きく依存しているため、他国より影響を受けやすい。産業立地としてのダメージ(産業空洞化など)はまだ発生してないが、気候変動対策やデジタル化などのトランスフォーメーションを大幅に加速できなければいずれ発生する。エネルギー価格高騰は、今後もずっとドイツの競争力阻害要因であり続けるため、イノベーションと生産性向上で補うしかない。」
  • 政府は大規模な経済援助を発動し、エネルギー確保にも奔走した。また、企業も節約などのあらゆる企業努力を尽くした。それらがなければコストは何倍にも膨れ上がっていたはずだ。