日独経済日記

日独間の架け橋となることを目指しています

20230320 UBSによるクレディスイス買収についてのドイツメディアの報道ぶり

 

UBSによるクレディスイス(CS)買収についてのドイツ主要メディアの報道ぶりは以下の通りです。

  • 大手行が行き詰まった場合、他の大手行との合併、国による不良資産の買い取り、国有化などの選択肢があるが、今回のケースでは国有化の方が安全だったのではないか。
  • 強力な大手行が小規模銀行を買収するケースであれば、再編や問題部分の清算は簡単だが、大手行同士の場合はリスクが非常に高くなる。特にCSはスキャンダル、訴訟、ミスマネジメントまみれの大手行だ
  • 実際週明けのアジア市場ではあまり不安の払拭感がなかった。
  • 特にCSの株式や債券(AT1債を含む)の保有者は大きな追加損失を被っている(ドイツにはCSのAT1保有者はほとんどいない模様)。「銀行はもうこれで大丈夫」という確信はすぐには持ちづらい。ある程度の時間の経過が必要。
  • 合併後はスイスのGDPの2倍以上のバランスシート合計を持つ巨人が出現する。スイスは1行独占となり、競争原理は働かなくなる。特にウェルスマネジメント顧客やスイスの輸出企業が困ることになりそうだ。
  • 大き過ぎてつぶせない銀行(TBTF)は極力作らないようにするはずだったのに、また作ってしまった。次にUBSが傾いたら、スイス政府は支えきれないかもしれない。
  • 先週末のCSの時価総額74億CHFに対して30億CHFと半値以下での買収、かつ政府による90億CHFの損失補填が勝ち取れたので、UBSとしてはまあ安い買い物になったのではないか。
  • UBSは、現時点で見極めのついていないCSの膿を真っ先に政府の損失補償枠で処理することにより、一刻も早いあく抜けを目指すはず。
  • 欧銀へのコンテ―ジョンリスクはかなり限定的に見えるが、これはこれまでの厳しい金融監督のおかげ。欧州の銀行監督が米国より厳しすぎて困る/米銀と比べて欧銀の収益性が低いのはそのせいだ、という批判もこれでなりを潜めそう。
  • 欧銀株(下図灰色線)は1週間で▲12%下落している。勝者はドイツ国債(橙色)とビットコインと金だ。仮想通貨が銀行より安全と思われ始めているとすれば、大変な皮肉である。

 

 

 

<日本語での解説例>

www.bloomberg.co.jp

www.nri.com