日独経済日記

日独間の架け橋となることを目指しています

20230614 ドイツ初の国家安全保障戦略についてのドイツメディアの報道ぶり

https://www.bundesregierung.de/breg-de/aktuelles/nationale-sicherheitsstrategie-2195890

 

ショルツ首相65歳の誕生日でもあった本日、ドイツ政府よりドイツ初の国家安全保障戦略(75ページ)が発表されました。これについてのドイツメディアの報道ぶりは以下の通り、期待外れだとかなり批判的です。

https://www.nationalesicherheitsstrategie.de/Sicherheitsstrategie-DE.pdf

 

<戦略概要>

  • 軍事政策だけでなく、より包括的・体系的・総合的なアプローチで策定
  • 防御力、回復力、持続可能性の3つが柱
  • 国防、開発政策、サイバー攻撃フェイクニュース・スパイ活動などからの防御、気候危機やパンデミックへの対処、サプライチェーン強靭化などをカバー
  • 国防費のGDP比2%への引き上げを明記
  • NATO, EUでドイツがより強力なリーダーシップを発揮
  • 緊急事態に備えて食料とエネルギーの備蓄を構築
  • 武器輸出にはより柔軟(積極的)に対応
  • 国家安全保障会議のようなものは新設せず
  • 中国は「パートナーかつ競争相手」として覇権主義的な動きをけん制
    DecouplingではなくDeriskingを目指す(現時点で新味なく、具体策は後日発表)


<ドイツメディアの報道ぶり>

  • 軍事的責任を免れたまま、経済に集中していればよいという時代は終わった。
  • 大半が「そりゃそうだろう」と思われるようなありきたりな言葉の寄せ集めであり、真の戦略性がほとんど感じられない。
  • これは戦略というより、私たちが善良な人間であり、私たちは良いことだけしようとしており、すべての人々の幸運を祈っている、という宣言に過ぎない。
  • この程度のものにこんなに(15か月も)時間がかかったことが不思議。
  • ヨーロッパのパートナーやドイツ国内の地方政府と十分に相談したように見えないが大丈夫か。
  • 特に同盟諸国を「この程度しかやらないのか」とがっかりさせる可能性が高い。
  • 「ハックバック」(攻撃者への反撃などより積極的なサイバー防御)の見送りなど)、デジタル後進国であるドイツのサイバーセキュリティ対策への危機感が低すぎる
  • いつまでに誰が何をやるのかも明白でない。サイバーセキュリティやインフラ保護などでは州当局の果たす役割が大きい。
  • 首相と外務省の主導権争いがネックとなり、国家安全保障会議の設置が見送られたという噂がある。
  • 国家安全保障のように、高度に横断的な問題を、中央集権的組織なしで一体どうやってまとめられるのか。
  • 連立ジュニアパートナーFDPは、引き続き国家安全保障会議設立を目指す。
  • 皆が対中新戦略の発表がずっと待っているが、その取りまとめにはまだ数か月はかかる模様。
  • 米国のような対中強硬路線の回避を明言しているので、中国はかなり喜んでいるはず。
  • 化石燃料禁止を目指す暖房法などと異なり)市民生活を直撃する法律ではないので、まあ国民の間での議論もさほど盛り上がらないだろう。

 

<日本語報道例>

www.msn.com