この2年間、ドイツ政府はさまざまな施策によって国民を物価上昇による生活苦から救おうと努力してきました。
IW(ドイツ経済研究所、@ケルン)が、これらの施策によって誰がどの程度恩恵を受けたかについて整理した結果を発表していますので、そのエッセンスをご紹介します。
- 全体として、政府が狙った通りの効果が出ており、目標はおおむね達成されたと言える。しかし、支援を必要としない人々に恩恵を与え過ぎた部分もある。
- ドイツ政府は28種の施策を打ち出したが、そのうち主だったものは、電気・ガスの価格引き下げ(上限設定)、9ユーロ全独乗り放題切符、ガソリン・軽油のエネルギー税引き下げ、年3,000ユーロのボーナス非課税など。
- これらの対策に計約2400億ユーロ(38兆円相当)が投入された。
- どんな人がどれだけを恩恵を受けたかについては、下表★ご参照。
- 例えば、4人家族で年収40千ユーロの場合、物価上昇による負担増は5,388ユーロだったが、政府支援による負担軽減が8,543ユーロあったので、ネットで3,155ユーロの受取超過となっている。
- 年収75千ユーロを超える単身者に対する1322ユーロもの政府支援は不要だったかもしれない。
★<どんな人がどれだけ恩恵を受けたかマトリックス>
上段: 単身 所得年25千ユーロ、45千ユーロ、75千ユーロ
インフレ負担増 ▲2,622 ▲3,360 ▲4,183
政府支援負担軽減 +1,008 +808 +1,322
ネット ▲1.614 ▲2,552 ▲2,861
下段: 家族 所得年40千ユーロ、70千ユーロ、120千ユーロ
インフレ負担増 ▲5,388 ▲6,569 ▲8,099
政府支援負担軽減 +8,543 +2,311 +2,098
ネット +3,155 ▲4,258 ▲6,001
<ドイツ政府によるインフレ対策施策(28種)の財政負担一覧>
財政負担として大きい順に、1:累進課税緩和(3年累計445億ユーロ)、2:環境賦課金軽減(同346億ユーロ)、3:ガス価格上限設定(同300億ユーロ)、4:インフレ補填用非課税ボーナス(同220億ユーロ)。
<上記財政支出の年度別分布>
今年はかなりの財政出動をしているにもかかわらず、通年マイナス成長(▲0.3%程度)が回避できそうにない見込み。これらが軒並み期限切れとなる2025年には財政の崖が発生。