日独経済日記

日独間の架け橋となることを目指しています

20230227 ドイツ「国防戦略の転換点」1周年

 

ちょうど1年前の今日(2022年2月27日)、ロシアによるウクライナ侵攻直後の国会で、ショルツ首相は「Zeitenwende」(転換点)という言葉を使った力強い演説により、これまで歴史への反省から消極姿勢に徹してきたドイツ国防戦略をより積極的なものに転換することを宣言しました。

 

「私たちは転換点を迎えており、後の世界は前の世界と同じではない。」「私たちは歴史の正しい側にいる。」として、コロナ後の苦しい財政にもかかわらず、ドイツ国防軍のために 1,000 億ユーロの特別基金を確保すると発表しました。

 

最初ウクライナにヘルメット5千個を送ってかえって失笑を買ったドイツでしたが、その後は最新鋭戦車レオパルド2や対空自走砲、対空ミサイルなどの提供にまで踏み切るようになりました。

 

その後、この「Zeitenwende」は2022年の流行語大賞にもなりました(関連解説記事ご参考)。

dateno.hatenablog.com

 

しかしこの「転換点」が全然まともに進んでいないという批判が、ここ半年間ぐらい根強くくすぶり続けています。代表的な声は以下のようなものです。

  • その後ドイツ国防軍に真の改善はまったく見られない。
  • 「時代の転換点」というより「スローモーションの転換点」にしか見えない。
  • 1000億ユーロの特別基金のうちいまだに2/3以上が使い道の目途すら立っていない。
  • もともと手薄なところで、ウクライナへの提供後の補充にももたついたため、手榴弾やロケット弾が圧倒的に不足しており、ドイツを自衛しようとしても数日しかもたない。これではNATOの義務もまともに果たせない。
  • 調達でぐずぐずしているうちにインフレによる値上がりもひどくなり、もう1000億ユーロでは足りないかもしれない。
  • 今のところうまくいったのは「ガス不足を防いだこと」だけではないか。

 

今年1月に就任したばかりのピストリウス国防相は、こういった課題の克服に鋭意取り組み始め、国民の期待も大きいため、現在ドイツ政治家人気ランキングでダントツトップを走っています。請うご期待/お手並み拝見、といったところでしょうか。

dateno.hatenablog.com

 

なお、ウクライナ支援でドイツがリーダーシップをとるべきかどうか、については国民の過半数が否定的(絶対NO:43.1%、どちらかと言えばNO:10.0%)です。