日独経済日記

日独間の架け橋となることを目指しています

20240804 週末のBloombergより(サームルール発動など)

 

①Real Yield
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金利急低下(2年国債3.93%、先週比▲45bp)と株価急落は、金融緩和が遅すぎたのではないかというマーケットの懸念の高まりを表現したもの。
◆今回の雇用統計は一頃の過熱状態からよりバランスの取れた状態に戻ったことを示しているだけだが、マーケットは雇用が今後壊れていくことを心配し始めている。
◆弱い雇用統計後、大手銀行が利下げ見通しを大幅修正し、50bpやインターミーティングの利下げを予想するところも出始めた。
◆現行の政策金利がかなりrestrictiveであり、インフレが下がるほどその度合いが高まってくるのは事実。
金利高止まりを長く続ければ続けるほど、FEDのもう一つのマンデートである「雇用」への目配りの重要度も増してくる
◆マーケットは年初来、「年内7回利下げ」から「ひょっとしたら利上げ」まで勝手に先走りしてきた。FEDとしては妙にパニックせず、複数月のデータを見極めていく方針。
◆今後はFEDが年4回発表するドットプロット(SEP、次回9月)が非常に重要になる。
FEDは単月の雇用統計やインフレ統計(FEDのマンデートに直結する指標)だけを見て金融政策を決めているわけではない。クレカの延滞などを含むデータの総合的分析(through line, totality)がきわめて重要。
◆一方、マーケット(セルサイド、投資家)としては、競合をアウトパフォームするために少しでも先読み/先回りする必要があるので、一つ一つのデータに(時には強めに)反応せざるを得ない。
◆どちらが米大統領になっても、財政リスクに伴う長期金利上昇圧力は相応に高そうなので、10年物国債金利(3.89%で越週)の今後の低下余地はそれほど大きくないかもしれない。

 

②Wall Street Week(今回はAspen特集)

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サームルール発動で、市場の景気後退懸念が一気に高まり、金利急低下(一部では50bp刻みの利下げ予想台頭)、株価大幅下落の1週間となった。
◆但し、GDPはまだ十分強く、通常の景気後退時のように企業が活発にレイオフしているわけでもないので、市場が勝手にパニックしているだけの可能性もある。

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◆バイデン政権は、対中戦略上極めて重要なインド太平洋でのアライアンス強化のため、日米韓関係を過去70年なかったレベルにまで高めている。
◆しかし、米大統領選でトランプが勝利すれば、インド太平洋を含む西側諸国との間での各種の重要なアライアンスが根本から揺るがされる可能性がある。
中国のように知的財産権を保護せず、技術やノウハウを盗むだけのような国を、グローバル経済システム内にこのまま置いておくことはできない
◆中国が国家体制としてどんなシステムを採用するのも勝手だが、経済システム内のプレーヤーとしては容認できないので、何らかの切り離しが絶対に必要である。
◆中国はその膨大な人口に対して、十分な食料とエネルギーを確保しきれておらず、潜在的脆弱性となっている。
独裁政権トップダウンで迅速な意思決定が可能なので、経済的にも一見有利に見えるが、政策の誤りに気づかず、優秀な人材が離れ、腐敗していくので、結局はダメになる。中国では今まさにそれが顕在化しつつある。
◆トランプの支持者層には上限がある一方、ハリスは新たな支持層獲得のポテンシャルがあり、目先は勢いがありそうに見えるが、過去の政治的実績が極めて乏しく、インフレや移民問題での責任を追求されると非常に苦しくなりうる。
◆但しハリスは、インフレや移民問題で将来に向けた新たな改善策を訴えることができる。トランプ側にも良い案があるわけではない(関税でインフレは上昇し、移民を排斥すれば経済成長は大きく切り下がる)。
◆ハリスは中絶の権利確保、選挙結果の潔い受け止め(トランプの態度との対照)などでアピールすることができる。
今やバイデンではなくトランプがOld Guyになった。ハリスはサイバーリスクやAIなどをテーマにして若さをアピールすることもできる。
ハリスは検事や上院議員の経験しかないので、副大統領としては行政能力のある州知事を選ぶべき。誰にすべきかを最も左右するのは接戦州での集票効果
◆今回の利上げ局面では、深刻な景気後退という代償を払うことなくインフレを克服しつつあるので、金融政策が大成功しているかのように見えるが、物価の水準が大きく切り上がってしまったことが最大の問題

 


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