ドイツ連邦統計局が今月発表したドイツ人口動態予測のエッセンスについてまとめておきます。数字のレベル感だけでも頭に入れておく価値はあると思います。
https://www.destatis.de/DE/Presse/Pressemitteilungen/2022/12/PD22_511_124.html?nn=238906
東西ドイツ統一の1990年から現在(2021年)までの間に、ドイツの人口ピラミッド(青:男性、赤:女性、縦軸は年齢)は下図の通りきれいに上にシフトしてきました。
ここを出発点としつつ、今後の人口軌道を左右する、①出生率、②平均寿命、③純流入(移民+ドイツ人帰国)、の3大要素について、それぞれ以下のようなシナリオが設定されています。
①出生率
G1:1.46(現状程度で低迷継続)
G2:1.55(コロナ前くらいまで戻す)
G3:1.67(政策対応/移民などにより大きく改善)
②平均寿命(赤:女性、青:男性)
L1:わずかな増加
L2:中程度の増加(過去のトレンド並みに回復)
L3:大幅増加(生活習慣や医療字術が大幅に改善)
直近の凹みはコロナ死者急増によるものです。
ちなみにドイツの平均寿命はかなり低い方(世界ランキングで20位前後、下添リンクご参照)で、特に男性は80歳まで生きられません。医療水準は高くても、たばこ、アルコール、食生活(南欧諸国の男性は長生きしているので)が悪さをしているせいだと言われています。
逆に言うと、今後は生活環境の改善、タバコとアルコールの消費量の減少、医学の進歩などにより大なり小なり男女とも平均寿命は伸びそうだということになります。
③純流入
W1:低レベル(年18万程度、1955~2009の平均、ドイツの魅力低下)
W2:中レベル(年29万程度、1970~2021の平均、長期平均並み)
W3:高レベル(年40万程度、2010~2021の平均、人道的移民多発)
なお、最近の二つのピークはウクライナ危機(一番高い山)とメルケル前首相の「難民のみなさんドイツにいらっしゃい」(二番目に高い山)によるものです。
上記3要素(①~③)の組み合わせを掛け算すると人口軌道が描けます。
下図中央の赤線は上記3要素とも中庸(2)を採用したもので、各種シナリオのちょうど中間にあるメインシナリオ的位置づけになります。
青点線(G3L3W3) :人口最大化
青実線(G2L2W3) :2要素中庸+高流入
赤実線(G2L2W2) :3要素すべて中庸
灰実線(G2L2W1) :2要素中庸+低流入
水色点線(G3L3W3):人口最小化
上記グラフの実線の範囲で推移すると、2070年の人口ピラミッドは以下のようになると予想されています(濃い部分外側:G2L2W1、内側:G2L2W3)。
ドイツの人口軌道のシナリオは、上下ともバラエティに富んだものになっています。日本ではほぼ減少シナリオしか想定できない(議論されていない)のと比べると非常にダイナミックです。
<平均寿命世界ランキング>