ここ2年のドイツのインフレは国際比較においても相当ひどいものになっているわけですが。。。。
昨年のドイツの賃金(以下業種毎の表示)はインフレの+8.7%と比べると遥かに低く、
その結果、実質賃金は(2021年よりさらに大きな)マイナスとなっていました。
ドイツ労組としては、このような状況はもはや許容不能ということで、今年は軒並み10%超の賃上げを要求し、空港、電車、郵便局などといった重要インフラでも容赦なく大規模なストライキを繰り返しています。
そのような状況下、ドイツ連銀は「賃金の物価に対する顕著な2次的効果を覚悟しなければならない。これによって、インフレ率がユーロ圏の中期目標である2%を大幅に上回る期間が長引くことになる。」と危機感を募らせています。
(原文:Spürbare Zweitrundeneffekte auf die Preise sind absehbar. Sie tragen für sich genommen dazu bei, den Zeitraum zu verlängern, in dem die Inflationsrate deutlich über dem mittelfristigen Ziel von 2 % für den Euroraum bleiben wird.
こちらはユーロ圏全体のインフレ(HICP)の軌道予想(直近濃紺線)です。
足元の約10%から年末には3%くらいまで下がるという見込みにはなっていますが、上記の賃金の2次的効果に加えて、2024年初にはインフレ抑制政策の解除もあるので、なかなかインフレ目標の2%には下がりそうもないという絵になっています。
ドイツでは今年平均で6%の値上がりが予想されています。
2年前と比べると今年末にはモノの値段が2割以上切り上がり、二度と元にはもう戻らないわけですので、ドイツ人のインフレに対する不満は今年も非常に根強いままとなっています。
経営側から具体的オファーがない、というだけで恐喝まがいのストライキが繰り返され、市民生活に大きな影響がでていますので、「ストに入る前にある程度の経営側との交渉実施を義務付けるべきだ(安易なストを防げ)」という声も少し高まっていますが、インフレ分くらい取り戻すのは労働者の当然の権利だという理解もあり、ストライキ自体に対する市民の批判が高まるという状況にはなっていません。
なお、ドイツ経済や賃金情勢については、こちらのYouTubeチャンネルでも随時詳しく解説していますので、よろしければ併せてご活用ください。