◆パウエル議長の利下げ前のめり度撤回で「Hiher for Longer」が再びキーワード化。一部には次の一手が利下げではなく利上げなのではないかという声(UBSなど)も上がり始めている。
◆もうすぐ利下げ、と期待して積み上がった米債のロングが逃げ遅れており、10年4.75%を上回ってくると、ロスカットの売りで5%をつけにいってもおかしくない状況か。
◆本来非常にsmart(賢明)な人たちがこれほど長期にわたって読み違えたことはあまり例がない。
◆ウクライナ、イスラエル、台湾支援のための追加財政出動(総額950億ドル)や最近のコモディティ価格上昇は追加的インフレ上昇圧力となっている。
◆TIPS(インフレ連動債)の人気化はインフレヘッジニーズの高まりを象徴している。
◆仕上がり利回り重視でタイトなスプレッドを許容してきたクレジット投資家も、これからは苦しい局面になるかも。HYで8%超は一見魅力的でも、米国債5%なら色褪せる。
◆10年5%に向けて押し目買いで立ち向かう人たちはまだいるだろうが、インフレ鎮静化がますます不安視される中、ボラ(move index)も上がり始めており、要厳重警戒。
◆地政学リスクの高まりによる質への逃避買いより、ボラのリスクの方が大きくなる可能性があり、リスクオフに備えて単純に米国債買い、となりにくい。
◆安全かつ利回りが高いエージェンシー債や、高利回りかつ変動金利のAAA-CLO/レバローン/それらのETFなどの方が魅力的。
◆長期的に見て実質金利が魅力的であることだけは間違いなさそう。ボラが高まる中、トレードタイミングを測るのは極めて難しいので、ジタバタせず実質金利を取りに行くべき。
◆逆イールド環境下でイールドを取るためには、ある程度クレジットリスクを取らざるを得ないが、長期にわたる低金利環境下でレバレッジがやや過大になった状態で迎えるリファイナンスのリスクを個別にしっかりと見極めることが非常に重要。幸い景気は悪くない。
◆現時点でまだ可能性は低いが、次に警戒すべきは(戦争拡大より)ホルムズ海峡の封鎖。
◆これ以上米国のウクライナ支援を遅らせるのは危険かつ無責任。ロシアに勝って領土を奪回できる可能性は低いが、ロシアに更に押し込まれるようなことがあってはならない。
◆地政学リスクが高まる中、トランプが米国の既定路線をリシャッフルするのは大変なリスクだが、一方で米欧のウクライナ支援に対する危機感の高まり、日韓関係の修復、インドの政治経済面での台頭など、世界の安定に寄与する方向の明るいニュースもある。
◆イスラエルのイランへの反撃は非常に限定的で、イランも冷静に反応している。株価を押し下げているのは、地政学リスクよいうよりはFEDの「利下げなし」への方向転換か。
◆金利が思ったほど下がらないのであれば、株価のバリュエーションも当然下方修正が必要になる。景気が強い/企業業績が特段悪化したわけではない中での今回の株価下落は、継続的下落につながるものではないように思われる。
◆商業用不動産価格は全体平均で概ねピーク比▲20%(オフィス▲35%~工場用UNCH)。今局面で予想される下落はほぼ出つくしている。
◆Maturity Wallは過去にも何度も注目されてきたが、債務者が必要に応じて先手を打つので、実際に問題化したことはこれまで一度もない。今局面でも過度の悲観は禁物。
◆不動産価格がボトムを打ったと思えばすかさず出動してくる巨額の待機資金が待ち構えているので、出遅れるよりはやや先走った方が良い。。
◆苦境が続くオフィス市場でもESG重視の物件に対しては需要が高い。データセンター需要は引き続き高水準。
◆EVを高所得者層以外が購入し始めるフェーズになり、EVの高価格がネックになってきている。所得が相対的に低く、価格に敏感な買い手はプラグインHVを選んでいる。
◆今プラグインHVを買っている人たちも次はEVを真剣に検討する可能性が高い。その際、価格に加えて充填インフラの量的・質的充実がポイントとなる(長距離を走るので欧州より米国で特に重要)。
◆EV購入インセンティブとしては、直接的な補助金や減税よりは、炭素税のように市場メカニズムを働かせられるものの方が良い。
<日独経済日記>