日独経済日記

日独間の架け橋となることを目指しています

20040316 週末のBloombergより

 
◆来週(3/20)のFOMCを前にStickyなインフレ指標を見せられて、久々に大きめの金利上昇となった一週間。
◆一時は年内6回くらいにまで膨れ上がっていた利下げ期待は、年内3回ピッタリにまで後退。来週ドットが年内2回に減る可能性もある。
◆利下げ開始タイミングや利下げ幅への不透明感は増しているが、小売や各種サーベイ類の経済指標軟化は確認できており、来年金利が3%台半ばくらいには下がりそうという市場の期待までは揺らいでいない。
FEDとてインフレを2%に近づけるためだけに米経済をリセッションにまで追い込もうとはしていないはず。
◆インフレ低下で実質金利が上がっている上、低金利時代の資金調達は借り換えでこれからコストが上がる。逆イールド環境下では銀行融資も慎重になる。家計・企業とも今後は相応にブレーキがかかってくるはず。
◆一部のFED高官が「時期尚早な利下げによるインフレ再加速リスク」に警鐘を鳴らしているが、今のバランスだとインフレの上方リスクはせいぜい高止まり横ばい程度であり、利上げが必要になるとまでは思えない。
◆その見方が正しければ、更なる金利上昇余地はそれほど大きくないはずであり、債券5年超のゾーンは(金利レンジが切り上がりそうで怖い局面ではあるものの)押し目買いでよいのではないか。
◆higer for longer 環境下では、キャッシュリッチな大企業は手元資金でかなりの金利が稼げるが、財務の脆弱な下位10%の企業にとっては正念場。実際にデフォルトや債務再編が増え始めている。
◆クレカやオートローンなど消費者金融の延滞も既に上昇中。
◆商業用不動産のすべてが債務でファイナンスされているわけではないが、エクイティがほとんど残っていないものは今後リファイナンスに窮し、物件売却でアンワインドしても回収率は3割程度だろう。

◆インドは、インフラ整備、債務抑制、税制改革、補助金削減、倒産法整備、都市化推進など、10年来のマクロ経済上の宿題を着実にこなし、他のEM諸国をアウトパフォームする内需主導(個人諸費がGDPの65%)の良好な経済を作り上げた。
◆今後中所得の罠を突破するためには、製造業の裾野を広げ、そこで中・高所得の雇用を生み出す必要あり。
外資から見たインドの魅力的投資領域は、①グローバルに事業を展開するコングロマリットとの協働(西側のノウハウ持ち込みやファイナンス)、②インフラ関連投資(民間プロジェクト急拡大中)。
中国当局は、口では「海外からの投資は大歓迎」というが、経済について改革や解放など全く考えていない(行動も伴っていない)。
習近平は国家管理主導で不動産頼みの体質から決別し、テクノロジー(AI、EV、再エネなど)で勝負しようとしている。これに伴う民間セクターの痛みには特段配慮しそうにない。
◆西側諸国は経済安全保障上ベストなバランスの対中デリスキングを模索し続けている。①安全保障上重要な技術や製品を渡さないこと、②サプライチェーンや最終需要における依存度を引き下げること、が重要。
◆中国のEVや太陽光パネルの輸出攻勢は、国内過剰キャパシティを背景とする世界へのデフレ輸出そのもの。米国のIRAやCHIPSはこれに対抗するための有効な手段。
◆Higher for Longer 的ビュー再来で10年金利は先週23bpも上昇。来週20日FOMCで、6月利下げ開始を示唆するようなコメントは期待できない。
◆ココアとNVDIA株のチャートが不思議とそっくり。供給不足でスクイーズされているところが共通点か。
◆一口に米商業用不動産と言っても、ロケーションが良いトップ物件はオフィスでも需要が強い。問題を抱えているのは一部地域のオフィスで全体の2割程度。それらに対しても魅力的水準にまで価格が下がれば買いたいという投資家が待ち構えている。全体として底打ちしつつある、という評価は間違っていない。
◆以前と違って、不動産投資は株や債券とほぼ同列のアセットクラスとなった。投資にあたっては、マクロ経済の状況や短期的需給、中長期的な人口動態や地政学リスクなどを株や債券への投資と同様にチェックする。
◆そしてそのバリューは、単にロケーションや面積などではなく、人を集めてより生産的にするかどうか(魅力的デザインや共有スペースなど)で計測されるようになってきた。
◆バイデンとトランプは、過度に保護主義的かつ財政健全化に無頓着である点で大差ない。愚かな政治をあまり気にしていない最近の株価堅調にはかなりの危うさがある。
◆トランプが公約する全世界に対する関税10%(中国は60%以上)の導入は、世界経済の資産アロケーションを非効率なものにして、インフレと金利を確実に押上げる。
◆軍事支出と脱炭素投資にもお金がかかるので、財政には一層負担がかかる。中立金利も2.5%よりは既に高くなっていると思っていた方が良い。

 

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