昨日ECBから発表された金融安定報告のエッセンス(私なりになるほどと思ったポイントやデータ)は以下の通り:
Financial Stability Review, May 2024
- 【冒頭の総括】
ユーロ圏の金融安定度はやや改善したものの、依然として脆弱。資産価格(急落/リスクプレミアム過小)、債務(金利上昇)、不動産などに不安。 - 【上記に続くデータ】
銀行はしっかり監督されていて比較的懸念が少ないが、非銀行金融仲介セクター(含むシャドーバンキング)が心配。
- 不動産市場、特に商業用不動産の低迷が続いており、一部の銀行の資産の質に波及効果をもたらす可能性がある。
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住宅用不動産(RRE):今のところ概ね落ち着いているが、住宅価格が急落するリスクはまだ残っている。
- 商業用不動産(CRE):ユーロ圏のCRE向け不良債権比率は米国より遥かにマシに見えているが、評価引き下げが遅れているだけという懸念あり。
- ICRが1.0未満の(収益で利払いをカバーできない)企業向け貸出が昨年末時点で融資金額の8.4%に増加(左図)。ドイツ(DE:右図右端)では不動産(L)向けで+0.29%ptと2021年比最も増加。
- 世界の人口の半分以上を抱える国々で今年選挙が実施されるため、世界の経済政策の不確実性は高い。
- ECBがイメージするインフレ(赤)/名目賃金(黄)/実質賃金(青)軌道。今年は名目4%強の賃上げ(名目賃金上昇)を覚悟。
- クレジットスプレッドのタイトさ自体は悪いことではないが、リスクプレミアムが小さすぎて、いざという時に脆いリスクが高まっているということでもある。
- ノンバンク(NBFI):資産価格と流動性のリスクの観点から、特に不動産ファンドを注視。
- 銀行:金利上昇のおかげで銀行の収益(利ザヤは)大きく改善してきたが、最近は融資量、スプレッドとも頭打ち。
<日本語報道例>
<日独経済日記>