日独経済日記

日独間の架け橋となることを目指しています

20220505 ロシアの原油を買うのをやめたらドイツはどうなるのか

掲題について、ドイツ主要メディアの論調などを整理してざっくりまとめると以下の通りになります:

  • ドイツが輸入する原油におけるロシアのシェアは、昨年末の35%から足元12%まで押し下げに成功している。
  • 運搬・貯蔵が難しく、パイプライン(ノルトシュトリームなど)からの切り替えが容易でない天然ガスと異なり、ドイツがロシア産原油をあきらめるのは比較的容易。
  • 産業界への影響: 天然ガスを禁輸すると、多くの工場が止まりかねない(そもそも生産できるかどうかの問題)が、原油の禁輸では、高くてもノルウェー、米国、北アフリカアラブ諸国などから代替品を調達可能(価格競争力の問題)。
  • 消費者への影響: ガソリン価格上昇による悪影響が中心(次項ご参照)。減税などによる対応は決定済み。9ユーロ切符(月9ユーロで急行以外の電車・バスが全国で乗り放題、6-8月限定販売)で自家用車から公共交通機関へのシフトを促す(但し、これによる大きな財政負担、公共交通機関や一部国内観光地の大混雑が懸念されている)。

 

【ドイツにおけるガソリン小売価格の現状と展望】

ドイツ連邦統計局によるモニタリング結果によると、1リッターあたりのドイツ国内平均小売価格(4/24時点)は以下の通りとなっています:

                    2/20(危機直前)        4/24

スーパーE5(バイオエタノール5%以内)   1.80     2.02(+12%)

スーターE10(バイオエタノール10%以内)  1.74     1.96(+13%)

ディーゼル                  1.80                   2.02(+12%)

 

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原油価格はここ数日(EUによる露産原油禁輸制裁のアナウンスもあり)切り上がっているので、上記よりは少し上にいると思います(大きな差ではありません)。

国際原油価格は先回りするので、露産原油禁輸の影響はこれでほぼ織込済(ガソリン価格がここから大きく切り上がる可能性は低いのではないか)と推察しています。

<ブレント価格(直近1年)>

ドイツ国内、ディーゼル小売価格(直近1年)>

 

 

ちなみに、ドイツのガソリン店頭価格は以下のように日中も結構動く(ダイナミックプライシングになっており、例えば深夜/早朝は4%くらい高い)ので注意が必要です。

Aktuelle Diesel, Sprit, Benzinpreise - günstiger mit clever-tanken.de

 

リッター2ユーロ(270円)というと日本から見ると非常に高く見えますが、実際のコストは半分くらいで残り半分が各種税金・賦課金(エネルギー税、付加価値税、CO2賦課金など)となっています。