先ほどドイツ連邦統計局より、7月小売売上高の発表がありました。
7月(単月) 年初来累計(1~7月) <共に前年同期比>
実質(濃い赤): ▲2.6% ▲0.1%
名目(薄い赤): +6.1% +6.4%
インフレ率が過去に例のない異常な高さ(7月+7.5%)なので、毎回名目で大きなプラス、実質でマイナスと表示され、評価が難しくなっています。解釈が難しいのでWEB上ではあまり解説されていないと思います。(ちなみに日曜祭日に経済活動がほぼ止まるドイツや欧州で前月比をみてもあまり意味はありません)
Germany Retail Sales YoY - August 2022 Data - 1995-2021 Historical (tradingeconomics.com)
独小売売上高指数、7月は前月比+1.9% 予想外の上昇 | ロイター (reuters.com)
以下、私なりに論点整理しておきます。
①ドイツの労働市場は引き続き堅調維持。
人手不足が深刻で、ウクライナ難民受け入れは消費下支え/インフレ抑制的。
20220831 最近の失業者/失業率増は、ドイツ経済にむしろポジティブ材料 - 日独経済日記 (hatenablog.com)
②相応の賃上げが続いているものの、インフレがひどすぎて実質賃金はマイナス。
労組はこのマイナスを取り返すために強気の賃上げ交渉継続⇒賃金上昇継続。
20220829 インフレでドイツの賃金実質目減り/税収急増 - 日独経済日記 (hatenablog.com)
③リベンジ消費は今年相応に出ていたが、
(衣料・靴・革製品:年初来実質+52%、家庭用品:同+10%)
インフレに食われてしまってほぼ一巡。
20220824 コロナ後の過剰貯蓄はインフレでほぼ枯渇 - 日独経済日記 (hatenablog.com)
【結論】
- 景気を押し下げているのはあくまでインフレ(金利や金融環境ではない)。
- 雇用、賃金がしっかりしているので、失業増を伴う普通の景気後退局面とはならない。
- 足元の小売売上は高い名目成長を維持しており、なかなか健闘していると解釈すべき(現時点で過度に悲観的になるべきでない)。
- 但し、リベンジ消費余力がなくなり、今後更にエネルギーで出費がかさむため、冬場に向けての急激な消費落ち込みには警戒が必要。