日独経済日記

日独間の架け橋となることを目指しています

20230209 ドイツインフレ中長期見通し

 

先ほどドイツ連邦統計局から1月CPI速報の発表があり、

 ドイツ国内(CPI)ベース  : 前月比+1.0%/前年同月比+8.7%

 ユーロ圏共通(HICP)ベース : 前月比+0.5%/前年同月比+9.2%

と、高水準ながらも市場予想は若干下回る内容となっていました。

速報では内訳が判らないので推察しかできませんが、12月の暖房費を1ヶ月だけ政府が一括肩代わりした反動と年初の料金改定(値上げ)幅が恐れていたほどではなかったということかと思われます。

 

近年のインフレの元凶であるエネルギー価格(CPI内のウェート約1割)も最近は落ち着いており、前月比を押し上げる要因にはなっていません。

 

現時点で最も権威あるドイツ経済予測である政府年次経済報告(1/25発表)によると、CPIは年平均で今年+6.0%、来年+2.8%と高止まりする見込みです。

 

家庭のガス代、電気代の跳ね上がりをマイルドにする各種政府支援策が今冬導入されており、今年のインフレ率を2%程度無理やり押し下げるのですが、施策打ち切り後に来年まるまるその反動が出るので注意が必要です。

今年は2%押し下げても6%の仕上がりですので、インフレの基調自体は昨年(+7.9%)とあまり変わらないということになります。

ドイツ連銀ナーゲル総裁などのECBタカ派が「まだまだ利上げが足りない(50bpの利上げを当面繰り返すべき)」と主張するのはこのためです。

 

上図グラフの右側はドイツ連銀のHICP軌道予測ですが、

①ベーシス効果(1年前のエネルギー価格が異常に高かった)と政府施策による押し下げのため、前年同月比は当面急降下しているように見えるが、

②来年初にはまるまるその反動が出て、(ドイツにおける)インフレ目標2%の達成は2025年後半まで見えてこない

というメッセージになっています。

 

ドイツのインフレが簡単には収まりそうもない状況が長く続きますので、当然労組は高い賃上げを要求しています(下表では年+12~15%)。

今年、来年と5%以上の賃上げが(マクロ的平均ベースで)必要な情勢です。

まあ、名目成長率が今年+6.1%、来年+4.5%と非常に高いわけですから、それくらいは売上と利益を伸ばして、賃上げにも分配するというのが筋ではあると思います。


なお今年から基準年が2015年から2020年に切り替わる(上記+8.7%は新基準ベースの速報)ので、2月23日の確報発表でその変更内容(特に主要項目のウェート)を確認するつもりです(2020年はインフレがひどくなる直前なので、エネルギーや食品のウエートが大きく増えるということはなさそうではありますが、念のため)。

https://www.destatis.de/DE/Presse/Pressemitteilungen/2023/02/PD23_041_611.html

 

【関連ご参考】

ドイツ経済についてはこちらの動画でも解説していますので、よろしければ併せてご覧ください。

www.youtube.com