ウクライナ戦争終結のための中国による12 項目提案について、私が当地で目にする主な論調を以下整理しておきます。
ドイツ政府は対中関係に配慮して「いかなる努力も歓迎」程度の穏当かつあいまいな反応にとどめていますが、メディアは容赦なく批判しています。
<ドイツメディア>
- 西側からの武器引き渡しを放棄し、経済制裁を止める休戦は、現状を維持しつつ侵略者ロシアの体力回復(さらには将来の再攻撃)を助けるだけ。平和実現に役立つロードマップにはとうていなり得ない。
- 核兵器使用の放棄の訴えは有益。「すべての国の主権と領土保全」の部分は具体的解釈次第だが、台湾は自国と主張しているように読める。
- テーブル反対側の遠くに座らされるショルツ首相と異なり、中国のトップ外交官王毅はプーチンのすぐ近くで話をしていたのが象徴的。この会話で中国からロシアへのカミカゼドローン100機提供の話(独シュピーゲルが直前にスクープ)は恐らく密かに封印された。北京は1年前より明らかにモスクワに近づいている。
- 侵略軍の撤退を求めておらず、侵略戦争を正当化している。その上武器供与と制裁の停止を求めるということは、中国がついにロシアの側についたことを意味する。
- 国連でもG20でも、ロシアの侵略戦争を非難する決議の受け入れを中国は拒否している。誰の味方か明白である。
- 戦争が長引き、ロシアが中国に依存するしかないというおいしい状況を維持しようとしているだけ。
- こういったあらゆる仲介がまともに成立しないからこそ、人類はこれまで以上に平和のプラットフォームとしての国連を必要としている。しかし中国とロシアのの拒否権のせいで実際にはほとんど何の役にも立っていない。
<欧州メディア>
- 「平和計画」という名に値しない内容。12 のポイントのほとんどはあまりにも漠然としていて何の意味も持たない。
- 中国の批判は、侵略戦争ではなく、西側の「一方的な制裁」(国連安全保障理事会の承認なしで西側がロシアに課した)に向けられている。プーチンが歓迎するのは当然。
- 戦闘開始1周年と、3月に予定されている習近平国家主席のロシア訪問に向けて「何かやってる感」を出そうとしただけ。しかし中国が意図した効果は全く実現していない。
- 中国がロシアを支援するために大砲や武装ドローンなどの殺傷兵器を送る準備をしている可能性がある。そのような敵対行為が実現するようなら、中国も西側の経済制裁対象になる。
【追記ご参考】米国の論調は概ねこんな感じのようです。
◆中国の和平提案は、インド、ブラジル、インドネシアなど、エネルギーや食料価格高騰で苦しんでいるEM諸国の本音を代弁している部分がある。気候変動対策のために西側からEMに約束されたカネはいっこうに出ないが、戦争には簡単に出ているというのもEMには不満。
◆だからこそ、西側から非難必至の内容でも、他に誰も仲裁できそうもない中、中国は敢えて大きく打ち出してきた。3月の習近平訪露の下準備でもある。
◆中国からロシアへの武器共有は、西側にとって制裁発動のレッドライン(欧米当局がタイミングを協調した上で公言)であり、さすがに中国もそこまでは踏み切れまい。