日独経済日記

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20240124 対中依存問題についてのドイツ連銀分析

https://www.bundesbank.de/resource/blob/844970/a5a1f26d59d1e1ef7c4f33786fada36b/mL/2024-01-china-data.pdf

 

本日発表されたドイツ連銀月報の中に、ドイツ経済の対中依存問題についての分析レポートが出ていましたので、そのポイントをご紹介します。

  • 中国が2001年に世界貿易機関WTO)に加盟して以来、ドイツは経済面で中国とますます緊密な関係を築き、中国経済の成長から大きな恩恵を受けてきた。
  • しかし、今やこうした相互依存関係に対するリスクが高まっている。
  • 中国は現在、(バブル崩壊で)大きな経済問題に直面していおり、国際的経済危機に発展する可能性も否定できない。
  • 加えて中国と西側諸国との関係が著しく悪化しており、貿易や地政学面でのリスクが高まってきている。
  • これらのリスクが顕在化すれば、ドイツ経済は大きな打撃を免れない。
  • 特に、中国から経済が突然切り離される極端なシナリオでは悪影響が甚大。
  • ドイツ製造業は中国の需要に大きく依存しており、中国と直接取引している企業も多い。それらの中国関連売上と利益の大部分が失われるだろう。
  • 中国から重要な中間財が納入されなくなることによる間接的影響も大きい。その多くは、短期的には代替が効かない。
  • ドイツ以外の他地域でも同様の悪影響が広がれば、世界経済の低迷経由で、ドイツ経済への下押し圧力はさらに強まる。
  • 金融システム面でドイツと中国との直接的つながりはかなり小さいが、ドイツの銀行部門は、中国依存度が高いドイツ企業に対する債権を多く抱えている。
  • ドイツと中国の経済関係が大きく混乱すれば、こうした企業への貸倒れリスクが高まる。ドイツ経済全体の低迷と貸倒損失が金融システムにかなりの負担を強いることになる。
  • 中国からの秩序ある撤退でさえ、かなりの損失を伴う。ドイツ企業はドイツ企業は重要な販売市場を失い、多くのサプライ・チェーンはおそらく、中国からの撤退によってしか再編成できない
  • 多くのサプライ・チェーンは効率を大きく損なう形でしか再編成できず対中依存関係は、せいぜい中長期的にゆっくりとしか縮小できないだろう。
  • 西側諸国と中国が良好な経済関係を維持することは、双方の利益になる。企業や政治家はそのための努力を続けるべきである。
  • ドイツとしてはこれらのリスクを軽減し、ドイツ経済の抵抗力を強化する努力を続けなければならない。

◆品目(業種)別対中依存度(右上ほど深刻)

  横軸:ドイツの輸出に占めるシェア

  縦軸:当該品目の中国向けシェア

 自動車(+部品)が突出、次いで機械、電機、電子、化学

 

◆中国が輸入を2割減らすような経済危機に陥った場合のドイツGDP下押し規模感

 1年目▲0.7%、2年目▲0.9%、3年目マイナスゼロ
 大半が中国および海外からの需要急減によるもの

 

◆重要な中国からの輸入品(横軸:中国の世界シェア、縦軸:ドイツ輸入における中国のシェア)

 金額が大きいのはラップトップ(右上)、スマホ(左下)、太陽光パネル(右上)

 

◆重要テクノロジー製品における中国の世界シェア(紺色:原料、水色:製品)

 上から順に、燃料電池リチウムイオン電池3Dプリンタ、ドローン、
 ロボティクス、太陽光発電風力発電、モーター

 

ドイツからの対外直接投資残高(10億ユーロ)

 左から 中国 米国 EU

 下から 自動車 化学 機械

 

<ドイツ貿易相手国一覧>

 

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