ドイツ連銀が9月月報内の特別論文の中で「ドイツの産業立地」について分析し、政策提言をまとめていますので、以下そのエッセンスをご紹介します。
- ドイツの産業立地が危機にさらされており、迅速な対応が必要。
- 主な逆風は、①人口動態、②対中依存、③エネルギーの3つ。
- ①人口動態:進捗する少子高齢化が、熟練労働者の獲得競争を激化させ、成長見通しを暗くしている。
- ②対中依存:依存度の引き下げが急務であるが、デカップリングを急げば、サプライチェーンが大混乱に陥る。
- ③エネルギー:再エネ供給増にはコスト負担が伴う。効率改善を通じてエネルギー需要自体を削減することが重要。
- このような状況下では、デジタル化を大きな成長の原動力とすることに注力すべき。生産だけでなく、製品を川上から川下まで普及させることが重要。
- 全体として、ドイツの状況はそれほど悪いわけではない。
- 人口動態の逆風に対しては、移民(含む難民)を相応にうまく活用できている。
- エネルギー危機に対しては、健全な財務と政府支援でうまく乗り切った。
- ドイツ経済の国際的価格競争力はまだまだ良好(グラフ下添)である(但し、一部にかなり苦しくなっているセクターはある)。
- ドイツ政府は、適切な枠組み整備によって、ドイツの産業立地としての魅力改善に貢献することができる。
- 一貫性のある予測可能な政策:脱炭素化やデジタル化といった変革的なプロセスは、ビジネスにとって透明で予測可能なものにするべき。
- 教育制度改革:脱炭素化とデジタル化に適応できる人材を供給するシステムに移行しなければならない。
- 調達源多様化:自由貿易協定の一層の拡大を通じて、中国への過度な依存のリスクを軽減する。
- その他、移民の労働市場取り込み強化と、行政の管理・認可プロセス簡素化も重要。
<以下は上記関連参考図表>
●製造業のGDPシェア(左)/雇用シェア(右)国際比較
全体に低下傾向にあるが、ドイツと日本が共に高い
●リーマンショック以降、貿易障壁(青)がどんどん増えて、貿易が世界のGDPに占めるシェアが伸びなくなっている。
●(輸出+輸入)/GDPの比率で見るとドイツが100%とダントツに高い。
⇒貿易が伸びなくなってドイツ(特に製造業)が伸び悩んでいる。
●ドイツの対外直接投資(黒:中国、薄青:米国、濃青:EU、灰:アジア、10億EUR)
自動車産業(上)は米中両市場に突出して大きな直投(中:化学、下:機械)。
●但し、全産業の対外直投に占める中国のシェアは約6%と特段大きくはない。
●ドイツの国際的価格競争力(グラフ上ほど強い)はそれほど大きく悪化しているわけではない(中国を除くアジアと同水準。EUは45%、米国は24%)。
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