日独経済日記

日独間の架け橋となることを目指しています

20240601 週末のBloombergより

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(以下は動画の要約ではなく、私なりに消化した上で市場へのインプリケーションなどとして整理したもの)

◆PCEデフレータが事前予想通り(上振れなし)だった安心感から、じり高基調にあった金利が反落。
◆但しFEDのプロジェクションよりはやや高めの走りであり、今年9月以降に年内1回織込まれている利下げが実現するためには、一段のインフレ低下が必要。
◆11月5日に控える米大統領選が9月18日のFOMCでの金融政策変更(利下げ)を難しくしているとの見方は少数。恐らくFEDは純粋にデータ次第で判断することになりそう。市場は9月利下げ半々の織込みで越週。
FEDが追加利上げを決断するには、半年くらい上振れデータが続く必要がある。利上げ再開はあり得ないわけではないが、現時点ではあくまでテールリスクとしての認識にとどめておくべき。
金利のボラは低下しており、エージェンシー債やクレジット投資(社債はIG85/HY310bpと非常にタイトなレベルで越週)におけるイールドピックアップによるキャリートレードは引き続き魅力的。
◆起債市場は引き続き活況かつ売れ行きも好調。但し米国債入札での需給悪化の兆候(今週央、一時的金利上昇を招いた)は(結果的には事なきを得ているものの)今後も要注意(仏国債格下げも嫌な感じ)。サプライは今後夏枯れ方向(需給は良好)。
米国債では今後の財政バランス悪化(利払い負担も着実に増える)にともなう増発(供給増加)をまず警戒すべき。景気減速に伴う金利低下期待(需要増加)との微妙な綱引きになる
金利の絶対レベルに注目したクレジット投資への資金シフトが進めば、米国債需要の減退要因ともなりうる

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◆株価や社債価格が上昇しているのは、経済が非常に良いバランスで成長しているから。多少のインフレ上振れや無リスク金利の上昇(少なくともこれまでのところはうまくこなせている)はさほど大きな問題ではない。
◆半年前に年内6回の利下げを織り込んでいたことを考えると、(株式マーケットよりは賢いとされる)金利マーケットもかなり間違えるし、非効率性を逆手に取るチャンスは無限にある。HYで年10%超のリターンを確保して最後までうまく逃げ切れればこれほどおいしい投資はない(投資環境としてはかなり恵まれている)。
TikTokは中国によるデータ盗用や世論操作に対する安全保障上の懸念から、全面禁止やオーナー変更を強いられようとしているが、言論の自由など法的観点からその実現は容易でない。
政府での使用禁止など、より狭い制約で決着する可能性もある一方で、他のSNSやEコマース(TEMUなど)に対する制約として広がる可能性もある
◆2018年から米国は中国と事実上の冷戦2.0にある。オバマまではずっと中国を自由放任してきたが、トランプになってから中国を重大な脅威と捉えなおし、対中戦略を大きく転換した。バイデンはその流れを継いでいる。
◆対ソ連での冷戦1.0と異なり、中国は経済規模が巨大である上、西側諸国との貿易/相互依存関係も大きい。当然冷戦1.0とは全く異なるアプローチ(軍事的圧迫ではなく経済や技術移転での制約活用)が必要となる。
◆トランプは関税を多用しているが、バイデンはトランプのファーウェイ/5G対応を見習って、半導体(軍事面だけでなく今後のAI化の進展でも重要)で効果的な制約をかけている。
◆中国のWTO加盟が最初のデフレ輸出局面だったが、余剰キャパをフル稼働してダンピング輸出(EV、再エネ関連設備)し始めた今は2回目のデフレ輸出局面になる。
◆西側諸国は当然これらを止めにかかるが、グローバル化の逆流/ブロック化、サプライチェーン再構築、関税、軍事支出増加などはすべてインフレ的に作用する。従ってインフレは冷戦2.0の特徴ともなる。
◆中国製の安価なEVや再エネ関連商品の購入を渋れば、一見グリーン化に反しているように見えるが、これらはすべて石炭発電によって製造されており、その購入は脱炭素をむしろ阻害する
◆アフリカ以外では人口は既に減り始めており、世界人口は2060年台に100億人当たりで頭打ちになる。中国の状況を見れば明らかな通り、その後人口は急激に減少に向かう。米国の人口増も移民だけで支えられている。
◆ますます多くの国で人口維持に必要な出生率2.1を割り込み始めている。育児や教育にお金がかかり過ぎることがその一因だが、出生率0.6で子供が急減し続ければ、いずれお金の問題では済まされなくなる。
補助金や優遇税制などで出生率を押し上げようとしてもほとんど効果がないことが実証されている。中国のような専制国家が3人子供政策を強行しても、出生率を2以上に押し上げるのは無理だろう。
人口が減り始める2060年台以降は、ネット移民供給はマイナスに転じる。米国はこれまで貧しい国の有能な人々を相応にうまく取り込んで経済成長の原動力としてきたが、今後はそれが不可能になる
◆中国のように人口は急減するが、外国人を移民として受け入れようとせず、外国人も行きたいと思わない国は、ロボットに人間の代わりをさせるしかないだろう。

 

<市場関連有益リンク集>

www.cmegroup.com

edition.cnn.com

en.macromicro.me

www.chicagofed.org

www.atlantafed.org

www.clevelandfed.org

www.atlantafed.org

www.itcmarkets.com

 

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