日独経済日記

日独間の架け橋となることを目指しています

20240629 週末のBloombergより(米大統領選TV討論など)

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◆インフレの落ち着き、景気減速感の高まり、債券/金利ボラ低下継続を確認した一週間。少なくとも利上げのオッズはほぼ無視できる状況になってきた。
◆但し、「データ次第」と宣言しているFEDが早期利下げを決断するほどの材料は、インフレ面からも景気面からも確認できていない。
◆TV討論でトランプ優勢を確認した後の債券市場の反応を見る限り、財政悪化に伴うベアスティープニングを恐れ始めているように見える。
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◆金融市場にとってトランプとバイデンの最大の差は規制に対するアプローチ(トランプは規制緩和方向)
◆もしここから長期金利が上昇に向かうとすれば、それは恐らく強い成長と高めのインフレ⇒高い名目成長を伴うので、企業財務にとって必ずしもマイナスとは言えない。但し、リファイナンスに窮するような企業には個別に注意が必要。
社債スプレッドはIG94bp/HY313bpと引き続きタイトで、クレジットイベントリスク対比で割高にも見えるが、高い絶対金利水準でキャリーを長く享受する上では十分魅力的。
◆消費者周りのクラック(住宅販売不振、延滞増加など)の過大評価は禁物。職を失いにくく、所得が増えている(+5~6%)中でインフレが低下(せいぜい+3%)しており、消費者が簡単にヘタるような環境ではない

 

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米大統領選TV討論ではバイデンがトランプというより自分自身(の老い)に負けた格好。但しヘッジファンドならともかく、長期投資家はこの結果だけを見て拙速なポートフォリオシフトに動いたりしない方がいい。
◆利払い負担が年間軍事予算並みに膨れるという財政悪化は両者共通であり、議会も含めて具体的にどのような政策が実現し、それらにどう市場が反応するかは現時点では全く予想不能なはず。
◆今後は米国債入札の動向を要注視。新政権に対する懸念の兆候はまずそこに出るはず。
◆長期投資において重要な5つの視点:①AI、②再エネ/インフラ、③Re-Globalization(世界経済秩序の変容)、④高齢化/ヘルスケア、⑤サイバーリスク
◆熟練労働者不足への対応においては、職業訓練(労組との協力)や必要な人材のための住宅確保がポイントになる(恐らく大学での高等教育ではない)。
◆米国はAIで中国を恐れる必要はないかも知れないが、再エネインフラ整備に必要な各種資源を中国に依存し過ぎでいる。その部分のデリスキング推進が経済安全保障上非常に重要。
中国経済には経済成長モデルの移行が必要なのに、習近平政権は、新モデル(テクノロジー・再エネ/内需主導)が立ち上がる前に旧モデル(製造業・不動産/輸出主導)をぶち壊してしまった
◆国内では家計・企業ともに景況感が悪いだけでなく、海外投資家も中国から逃げ始めており、これらのムードを改善することがまず必要。
◆対中政策ではトランプよりバイデンの方が優れている。半導体関連の輸出規制では友好国の協力が不可欠なのに、トランプは友好国に対しても一律に関税を引き上げようとしている。
◆バイデンはせっかく強い雇用と経済成長を実現したのに、賃上げを下回るはずのインフレに対する不満のために経済面でトランプより低く評価されている(やや気の毒)。
トランプが公約している対中60%/その他諸国10%の関税は、米国人一人当たり年1700ドルの負担増となる。不法移民の国外追放は約8百万人分人手不足を深刻化させる。
◆CEO達は軽々しく選挙にコメントしたりしないが、大半が内心かなり不満に思っているはず。
◆株式市場が高値更新を続けているのは、マクロ経済環境が理想的なGoldilocks状態だから。一時恐れられていたインフレ加速/金利急騰や景気急減速/企業業績悪化は視界からほぼ消えている。
◆米国が潜在ペースを上回る成長を続けているのは、①財政出動で刺激された民間投資が非常に活発で、②大量の移民を労働力としてしっかり活用できている(他国はこれが全然できていない)から。
◆エヌビディアの株価が過大かどうかについては誰も正しく判断できそうにないが、AIが経済に対して途方もなく大きな革命的影響を与えそうなことは確実。
◆AIのインパクト評価が難しいのは、先頭を走っている開発者たち(マイクロソフトやエヌビディアなど)ではなく、よちよち歩き段階にあるユーザー側の活用(生産性上昇)度合いが読めないこと。
◆少数のテック銘柄主導の株価インデックス上昇は確かにやや気持ち悪いが、一般企業がAI活用ですぐ業績を伸ばせるわけではないので、株価上昇のすそ野の広がりには相当な時間を要すると覚悟しておくべき。
◆エヌビディア株を「持たざるリスク」への対応で買わされていたような買いは、そろそろ一巡か?

 

FEDウォッチ>~年内利下げなしの確率はわずか6.2%。

www.cmegroup.com

 

<インフレナウキャスト>~6月も前月比+0.1~0.2%と落ち着いている見込み。

www.clevelandfed.org

 

<市場センチメント>~かなり慎重で、過熱感なし。

edition.cnn.com

 

<米金融環境>~過去30年で見ても、引き続きかなり緩い方。

www.chicagofed.org

 

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