【総括】
- 底流に構造的人手不足があり、これまでは就業者数が増え続けてきたものの、経済低迷の予想以上の長期化で求人は激減し、今後も失業者が増え続ける可能性大。
- 昨年まで就業者数×賃金（購買力）は堅調だったが、将来への不安（私も失業するかも知れない）の高まりから個人消費への点火はイマヒトツ。
- 今後就業者数にも賃金にも低下圧力がかかるため、個人消費回復が更に後ズレするリスクが高まっている。
●季節調整後失業者増減～前月比+10千人と、ほぼ市場予想ながら、コロナ後の回復が一巡した2023年1月以降、ずっと増加が続いている。
●失業率＜国内基準＞～6.1％で前月比横ばい。2022年6月の失業率上昇ウクライナ難民カウント開始によるものだが、基調も悪化方向であることに疑いの余地なし。シュピーゲル誌は「（人手不足で忘れかけていた）失業の恐怖が急速に戻り始めている」とコメント。
＜以下◆4つのグラフ◆はドイツ連邦雇用庁月報より抽出したもの＞
◆就業者数～これまでは概ね上昇を続け、11月4632万人と堅調に推移してきたが、そろそろ頭打ちとなりそうな気配（季調後、1か月遅れ/11月+23千人/10月+12千人/9月▲17千人）。
◆操短～（データとしては2ケ月遅れながら）10月287千人（前月比+62千人）と急増。雇用を維持するための措置とはいえ、本格的人員削減開始の予兆でもあり、今後要注視。
◆求人数～新規流入（下）、求人残高（上）とも低下トレンド継続。水準としてもコロナ前を大きく下回っている。
◆失業率＜国際労働機関（ILO）ベース＞～ドイツは3.4%と、EU他国比では優等生（EU内では下から4番目、EU平均は5.9％）ながらも、EUの低下トレンドに逆行して上昇中。
●ifo雇用バロメータ～軟調継続。製造業と小売・卸売業がとにかく弱い。
https://www.ifo.de/fakten/2024-12-19/abbau-von-personal-wird-wahrscheinlicher-dezember-2024
●IAB労働市場バロメータ～こちらも全体的に悪化傾向が鮮明。失業指数（橙）だけでなく、人手不足/囲い込みで堅調だった雇用指数（緑）がゼロ近傍まで低下（前項ifoと当該IABはドイツ当局が最も重視する雇用先行指標）
●IAB人手不足度指数～これだけ景気低迷が続いているのでさすがにやや緩んでいるが、不景気という割には水準が高く、人手不足感自体には根強いものがある。
●Indeed日次オンライン求人数～やや下げ止まりつつはあるものの、減少トレンド継続。失業者にとってはますます厳しい状況になっている。
●ドイツ連銀の見立て～失業者数（右上）は今年後半まで上昇を続け、その後緩やかに減少に向かう。労働人口（左上）は当面横ばいなので、就業者数（左下）は失業者数と逆の動きになる。マイナス成長からの脱脚とともに、一人当たり労働時間（右下）はじりじり増える。
マクロベースでの高賃上げは昨年で終了。今年以降は+2.5％前後の（インフレには悪さしない程度の）賃上げが続く見込み。（青：協約賃金、黒：実際に支払われる実効賃金）
●昨年来の主な人員削減アナウンスメント
https://www.tagesschau.de/thema/stellenabbau
＜ドイツの人手不足問題解説動画＞
＜ドイツ経済全体感アップデート＞
＜日独経済日記＞
＜ドイツニュースダイジェスト連載コラム＞
