ドイツ連邦雇用庁に付属するシンクタンクである労働市場・職業研究所(IAB、@ニュルンベルク)が毎月「人手不足インデックス」(0~10、数字が高いほどタイト)を発表しています。
冒頭のグラフがその過去推移ですが、今年はずっと5.0超とコロナ前の水準(4台)を上回っており、直近7月も5.2と高水準を維持しています。
マイナス成長で経済が不振な割に、就業者数(黒点線)は一向に減ることなく、失業率(青実線)が実質的にほとんど上がっていない(昨年6月の急上昇はウクライナ難民カウント開始によるもの)のは、この人手不足が時の経過とともに深刻化しているためと思われます。
https://tradingeconomics.com/germany/unemployment-rate
景気低迷で「欧州の病人」扱いを受けているドイツ経済ですが、国際比較可能なILO基準ベース(失業のカウントが厳しい)での失業率は3.0%(EU平均5.9%)と極めて優秀です。
そのような状況ですので、ドイツ連銀は、失業率の低下&高水準の賃上げ継続、を予想しています。
人手不足が余りにも深刻なため、多くの企業が現時点で採用している従業員を減らすことに対して極めて慎重になっているわけですが、新規採用意欲はさすがにやや軟化し始めています。
連邦雇用庁が非常に重視している「IAB雇用バロメータ」(中央:101でほぼ中立)でも、今後3ヶ月の就業者数(右)には強気な一方、失業者数(左)には増加圧力を感じているという何とも微妙なバランスになっています。
https://iab.de/daten/iab-arbeitsmarktbarometer/
ifo雇用バロメータはサービス業以外での雇用意欲急減を示唆しています。
https://www.ifo.de/fakten/2023-07-27/ifo-beschaeftigungsbarometer-gesunken-juli-2023
求人数(赤:連邦雇用庁公式統計、青:Indeedのオンライン求人)を見ても、引き続き高水準ながらも最近軟化が続いています(緑:就業者数)。
https://www.dashboard-deutschland.de/comparative-analysis/pulsmesser_wirtschaft
なお余談ですが、ドイツの一般メディアでは、季節調整「前」の失業者数増減しか報道しないので、マーケットが季節調整「後」の実態を重視するのとかなりズレていますのでちょっと注意が必要です。
例えば今月は前月比で6.2万人失業者が増えたという報道になっていますが、季節調整後では4千人減少(こちらが実態で金融市場はこちらを最重要視)です。
<7月ドイツ雇用統計解説>
<足元のドイツ経済の状況をさっとつかむためのリンク集>