日独経済日記

日独間の架け橋となることを目指しています

20230507 ECB利上げについてのドイツメディアの報道ぶり

 

先週5月4日(木)に、0.25%のギアダウン利上げを実施した上で、利上げ継続を示唆したECBについての、ドイツ一般市民(ビジネスパーソン)向けの報道ぶりは以下のような感じでした。

  • 欧州経済が冴えない割に、インフレ率は驚くほど高い。
  • ユーロ圏のコアインフレ率は、3月5.7%、4月5.6%と執拗に高止まっている。
  • グローバル化逆流、労働力不足、気候変動対応によって引き起こされる長期的なインフレ圧力を過小評価すべきでない。
  • ECBは、あまりにも長い間インフレを静観してしまったため対応が遅れた。その結果インフレ率が跳ね上がってコントロールが難しくなってしまった。インフレはボタンを押せば消えるというものではない。
  • このような状況下では、専門家でもどのような金利軌道が適切なのか判断が非常に難しい。インフレを克服するために、政策金利をどれだけ高くしなければならないか、もはや誰も正確に言うことができなくなっている
  • 預金:当初銀行は預金金利の引き上げに慎重だったが、最近はコール預金で2%以上、定期預金で3%以上を提示する銀行も増えてきている。しかし、7%超のインフレ環境下では実質目減りであることを忘れるべきでない。
  • 住宅ローン:2年前まで1〜1.5%程度だったローン金利が、今では3.5〜4%程度に上昇しているだけでなく、資材や人件費などのコストも大きく上昇しているため、住宅市場はすっかり冷え込んでいる。

     

  • 企業金融:利上げによる金利上昇に加えて、最近は銀行融資基準も引き締まってきているので、企業向け融資の需要が落ちてきている。

     

  • 株式市場金利上昇は株価に逆風ながら、今回を含めて当面のECB利上げは市場に織込済。DAX40は小幅安で反応。

     

  • 為替FEDは利上げを打ち止めにしたが、ECBはまだしばらく続けそうだということで、ユーロ(EUR/USD)が強含み推移を続けている。

 

筆者注:ドイツでは従前より、インフレ対応で後手後手に回っているECBに対する批判が支配的です。ヴァイトマン前ドイツ連銀総裁は抗議辞任しましたし、ラガルド総裁はドイツでは「マダムインフレーション」と呼ばれています。

dateno.hatenablog.com

 

 

<ECBの一般市民向け金融政策説明サイト>

www.ecb.europa.eu

 

例えばインフレについてはこんな感じでめちゃシンプルかつ定性的な説明になっています。もうグラフや数字すらあまり使わないようにしているようです。

 

<金融市場のプロ向け日本語報道例>

www.bloomberg.co.jp