ドイツ政府が半導体世界最大手の台湾TSMCをドレスデンに工場誘致した件についてのドイツメディアの報道ぶり(ハンデルスブラット紙が数日前にいち早く特ダネ報道していました)は以下の通りです。
- 本件投資総額は100億ユーロを超える見込みで。TSMC以外にも独半導体メーカー・インフィニオン、独自動車部品メーカー・ボッシュ、蘭半導体メーカー・NXPセミコンダクターズの3社が参加する。
- 当局承認などが条件となるが、EUもドイツ政府も後押しする見込み。
- ドイツ政府からの支援は50億ユーロとなる模様。
- 実際の生産開始は2027年末となる予定。
- 巨額の補助金拠出を伴う外資半導体工場は、マクデブルクへのインテル誘致に次いで2件目であり、国内専門家の意見は割れている。
- 戦略物資としての半導体の地元での確保を急ぎつつ、旧東独経済を活性化したい政治家達は本件を高く評価する一方、エコノミスト達は巨額な補助金の効果に対して懐疑的である。
- ザクセン・アンハルト州(インテル)とザクセン州(ドレスデン)の立地選択(共に旧東独)は、旧東独地区に先端技術の雇用を生み出し、経済の競争力強化に役立つ。
- この投資を成功させるためには、そもそもこの投資を前向きに歓迎し、インフラ改善や教育・イノベーションへの追加投資で援護射撃する必要がある。
- これらの半導体工場がサプライヤーと刺激しあって新たな付加価値や雇用を生み始め、地域経済活性化の起爆剤となって初めて投資回収が可能になる。
- 電力貯蔵技術や水素の輸入・輸送インフラなどの研究開発に同じ資金を投じる場合と比べて、本件が長期的に見て国に大きな利益をもたらすかどうかは疑問。
- 単に生産を請け負うだけでなく、研究やイノベーション(の一部だけでも)をドイツに引き込まない限り意義は乏しい。
- 数千人程度の(さほど高度ではない工員の)雇用を生むために数10億ユーロを投じるのは明らかに効率が悪い。
- このように大規模な補助金など必要ないというのが理想ではあるが、我々は現実を直視する必要がある。世界最大の経済圏である米国と中国を筆頭に、どの国も他国を出し抜いてでも自国経済を強化しようと巨額の国家補助金をばらまいているのだから。
- 結局のところ「それだけの価値があるのか?」という問いに対し、今それに正しく答えられる人は誰もいない。
<日本語報道例>