本日ドイツ経済省から発表されたドイツ政府の年次経済報告(単なる経済予測というよりは経済政策のベースとなるもの)のエッセンスは以下の通りです。
- メインテーマは「競争力の持続的強化」(10の取り組み分野後述、筆者としては日本がやるべきことと完全に重なっているものと思料)。
- ドイツ経済は困難な状況にあり、昨年▲0.3%のマイナス成長の後、今年も成長率は+0.2%どまり(昨秋の+1.3%予想から異例の大幅下方修正)。
- 短期的には、外需低迷、インフレ/高金利、緊縮財政が強い逆風。
- 長期的には、ドイツの産業立地の競争力低下が問題。
- ドイツにとっての最大の課題は労働力不足。今後数年間で状況はさらに悪化し、潜在成長率を押し下げる。
- すべての人々が全ての能力を発揮して仕事に就けるためなら何でも行うべき。
- 教育を強化し、女性、シニア、移民(含む難民)を活用すべき。
- 投資を阻害している官僚主義も大問題。連邦、州、地方、 EU のあらゆるレベルで協力して改善に取り組む。「成長機会法」(30億ユーロの企業負担軽減などを企図、現在上院で審議難航中)はその中の重要な一歩。
- 競争力を持続的に強化するための10の取り組み分野
①投資強化(的を絞った税制優遇措置など)
②官僚主義の削減(規制緩和や手続き簡素化など)
③イノベーションやデジタル化促進、技術主権の強化(投資促進、枠組整備など)
④労働供給の強化(海外熟練労働者誘致、女性/シニア/移民フル活用など)
⑤資金調達環境の改善(欧州統一資本市場、スタートアップ支援など)
⑥再生エネルギー供給拡大(風力と太陽光を軸とした推進)
⑦製品のサステナビリティやリサイクルの強化(対象商品の認証、支援など)
⑧経済安全保障の強化(自由貿易協定圏拡大、調達ルート多様化など)
⑨サステナブルかつ安価な住居の確保(脱炭素と安価な供給の両立)
⑩交通インフラの近代化(脱炭素推進、特に鉄道網を強化) - ドイツとしては環境上の限界を尊重しながらドイツの繁栄を確保したいと考えている。
- 将来世代の利益のためにも、規制とテクノロジーをうまく組み合わせてゆかねばならない。
<10の取り組み分野(ドイツ語表現)>
<主要計数一覧>
実質GDP+0.2%(外需寄与ゼロ)、名目GDP+3.5%、経常黒字GDP比7.4%、インフレ+2.8%、一人当たり賃金+5.3%
<潜在成長率> 労働投入(緑)マイナス寄与で+0.5%へ向けて低下中。
<日独経済日記 厳選経済関連投稿>
<ドイツ連銀によるドイツ産業立地分析>
~ほぼ重なりますが、対中依存度をより強く問題視していました