日独経済日記

日独間の架け橋となることを目指しています

20230718 ドイツIMF4条報告のエッセンス

Germany: 2023 Article IV Consultation-Press Release; Staff Report; and Statement by the Executive Director for Germany

 

昨日発表されたドイツのIMF4条協議結果報告IMFエコノミストチームが当該国を訪問して経済と金融に関する情報を収集し、政府や 中央銀行 のスタッフと経済政策について議論した結果の報告。中長期的構造問題や金融システムリスクの把握に便利)のエッセンスは以下の通りです。

 

  • 昨夏のロシアのガス供給停止後、ドイツ経済は抵抗力を発揮し、エネルギー危機をうまく回避した。
  • エネルギーの節約と確保に向けた素晴らしい努力に加え、厳冬でなかったことがその成功の理由。
  • しかしこのエネルギー・ショックの後遺症と金融引き締めの影響で、ドイツ経済は最近リセッションに陥っている。
  • 今年のGDP成長率は小幅マイナスに留まる見込み。成長のリスクは下向き
  • 注目すべきリスク要因はコアインフレと海外経済(上下両方のリスク)。
  • エネルギー価格ショックがコロナ起因による供給ボトルネックと相まってインフレ率を急上昇させたが、最近インフレ率は低下に向かっている。
  • ドイツの金融システムにおける資本と流動性は十分厚いが、一応引き続き銀行危機は要警戒。脆弱な銀行を特定し、集中的に監視すべき。
  • 短期的にはインフレ抑制のため財政引き締めを推奨も、中長期的にはグリーン成長促進や高齢化対策のための財政出動が必要と評価。
  • ドイツの潜在成長率を高めるためには、デジタル化、熟練労働者(移民)受入れ、労働者のスキルアップ促進、研究開発インセンティブ強化、革新的企業への資金供給強化、市場参入障壁撤廃などを奨励。

 

IMFスタッフの見立てはほぼ現在の市場コンセンサス(下表はやや古い)並み。

 

●中長期的潜在成長率は、移民受け入れを多少頑張っても労働投入のマイナスを補いきれず、0.8%程度に低迷する見込み。

 

★最近、ドイツの生産性低下が顕著(日本はかなり優秀)で起業も低調。

 

●毎年の財政赤字も債務残高も低水準かつ改善方向で、財政は極めて健全。いざという時には財政出動で経済を支える余力大。

 

★但し環境に優しくない補助金類(エネルギー減税等)がGDP比1.2%もある。

 

●人手不足感は根強く、賃金は上昇し始めている。

 

●強烈な金融引き締めで、住宅、商業用とも不動産価格は下落中。

 

●貿易黒字はやや縮小も、高水準の経常黒字(GDP比6%強)は長期的に維持される見込み。

 

<日本語報道例>

jp.reuters.com