日独経済日記

日独間の架け橋となることを目指しています

20220425 ドイツ第1四半期GDP(4/29速報発表)予想は前期比+0.2%

今年第一四半期のドイツGDP統計速報は今週金曜日(4/29)朝イチ(ドイツ時間朝8時、日本時間15時)で発表されますが、市場予想は前期比+0.2%と小幅プラスとなっています。

 

 

Germany GDP Growth Rate - 2022 Data - 2023 Forecast - 1970-2021 Historical - Calendar (tradingeconomics.com)

 

GDPとの相関が一番信用できそうなドイツ総合PMI(アウトプット指数)を見ると、前期比プラスは確保できていそうに見えます。

http://www.markiteconomics.com/Public/Home/PressRelease/553e7d193914481196404d34c408de53

 

その次に信頼できそうなifo景況指数(本日発表)の現況指数(黒線)を見ると、前期比(小さめの)プラスを示唆しています。

ifo Geschäftsklimaindex stabilisiert sich (April 2022) | Fakten | ifo Institut

 

4月13日に発表されたドイツ5大経済研予測では、前期比+0.1%(このあと結構加速)となっていました。


https://gemeinschaftsdiagnose.de/wp-content/uploads/2022/04/GD_F22_Langfassung_online.pdf

 

ちなみにドイツのご当局2つ(ドイツ連銀および連邦経済省)のNOWCASTは、最近全然当たっていないので、そろそろモデルの見直しが必要かなと思っています。

 

①ドイツ連銀のWAI(週次経済活動指標):前期比▲0.8%を予想

Wöchentlicher Aktivitätsindex für die deutsche Wirtschaft | Deutsche Bundesbank

 

②ドイツ経済省のNOWCAST(3/14時点):前期比+1.9%を予想

https://www.bmwk.de/Redaktion/DE/Infografiken/Schlaglichter/2022/04/17-konjunktur-bip-nowcast-download.pdf?__blob=publicationFile&v=4

20220425 マクロン再選でドイツ大安堵

 まだ速報の段階ですが、マクロンがルペンに(予想以上に差をつけて)勝利し、再選確実ということで、ドイツ主要メディアが歓迎しながら大きく報じています。

 

フランス国民はマクロンの改革路線の痛みにうんざりし、左右両極端に大きく割れているのですが、それでも今回の大統領選挙で極右のポピュリストによる独裁ではなく、リベラルな民主主義を選んだという結果となりました。

 

「これで欧州は救われ、プーチンには打撃になった」

「ルペンなら独仏機軸が失われEUが瓦解する、という連想で金融危機に発展していただろう」

「これでドイツは助かった、ありがとうフランス」

といった感じで、これで5年は大丈夫、という安堵感がドイツの中で広がっています。


Wahl gegen den Faschismus: Franzosen retten Macron und Europa knapp ins Ziel - FOCUS Online

 

なお、第一回目の投票で第3位となったメランション氏(左翼党)の支持者票は以下のように流れた模様です。極右よりはマシということでマクロンにやや多めの票が流れていますが、マクロンに対する不満が相応に大きいことも感じさせます。

Frankreich-Wahl: Macron bleibt Präsident! Er schlägt Le Pen deutlich - FOCUS Online

 

しかしマクロン2期目で44歳ってすごいですね。。。

エマニュエル・マクロン - Wikipedia

 

20220424 そろそろ独伊スプレッドも要注視

EUコロナ基金設立/EU共同債による資金調達開始以降、10年独伊国債スプレッドは100bp程度で低位安定していました。

EUコロナ基金はイタリアのGDPを今後4年間累計2%くらい押し上げる効果がありますし、EU共同債はイタリア国債の発行を増やさなくて済む上、ECBが債券購入プログラムでずっとイタリア国債を買い支えてくれているので、コロナ禍で厳しい環境下においても、独伊スプレッドの歴史的低水準が投資家に受け入れられていたのです。

しかし最近は米国主導の世界的金利上昇(正常化)の影響(あおり)を受けて、当該スプレッドは170bpまで拡大してきています。

欧州債務危機後のレンジ、100-300ppの真ん中に戻っただけと言えなくもないので、今のところはまだ「正常化」の範囲内と言ってよいと思いますが、世界的金利上昇の中で脆弱な債務者は真っ先に市場から狙い撃ちされますので、イタリアの債務問題についてもそろそろ目配りを始めておいた方がよろしいかと思われます。

Italy 10 Year vs Germany 10 Year Spread Bond Yield - Investing.com

 

イタリアは、国債の債務残高が非常に高く、日本同様、低成長、高債務という問題を抱えています。政府債務比率は、コロナ前の130%強から現在150%強まで上昇しています。

 

EU全体の債務比率はコロナで80%⇒90%となっただけなので、イタリアは平均以上に悪化していると言えます。

 

 

ちなみに財政優等生(ドケチ路線)のドイツは60⇒70%と立派に模範的行動を貫いています。

 欧州連合 | 政府債務(対GDP比) | 2000 – 2022 | 経済指標 | CEIC (ceicdata.com)

 

直近(2022年4月)のIMF世界経済見通しでは、ウクライナ危機勃発を受けてドイツとイタリアのGDPが大幅に下方修正(今年分各▲1.7/▲1.5%)されましたが、それでもイタリアは今年+2.3%、来年+1.7%の実質成長を確保しており、当面のインフレ高止まりで名目成長がかなりの高水準になることから、うまく行けば年3%程度のペースで債務比率は減少する可能性があります。これは独伊スプレッドタイト化圧力となりえます。

 

ECB利上げ軌道に対する市場織り込みは概ね左図赤線の通りです。この程度の(短期)金利上昇であれば、利払い負担の激増を心配する必要はないと思います。

ECBはFRBと異なり、QT(債券保有残高縮小によるバランスシート圧縮)には非常に慎重(今のところやりそうな気配が全くない)ので、ECBの利上げ過程でイタリア国債が投げ売りされてしまう可能性も低いと思います。

最大の問題は来春のイタリア総選挙です。現在のドラギ首相は、市場からの信任が厚く、かつ欧州債務危機問題の克服に貢献した実績ある前ECB総裁でもあるため、市場からの攻撃を受けることはまずありません。

しかし来春の選挙後にドラギ氏以外が率いるポピュリスト政権が誕生し、改革路線から放漫財政に舵を切りそうだ、と市場が意識始めるタイミングで独伊スプレッドの拡大余地を探る展開が始まるでしょう。

遅くとも今年後半にはイタリアの政局にも目配りが必要になると思います。

 

20220423 毎年4月23日はドイツのビールの日

本日4月23日は、1516年にドイツのバイエルンで「ビール純粋令」が公布された日ということで、ドイツでは「ビールの日」となっています。

ドイツのこの「ビール純粋令」は世界最古の食品法と言われており、「ビールは水、麦芽、ホップ、酵母のみから作るべし」というものです。粗悪な品質のビールを排除するための法律で、いかにもドイツらしいルールと思います。

現在ドイツでは約7500種類のビールが作られているそうです。

Tag des Bieres - Deutscher Brauer-Bund

Alles über Bier - Welt der Wunder - YouTube

 

ちなみに、2020年にYouGovが3万人を対象に実施した人気投票によると、ドイツ人の好きなビールトップ10(シェアではありません)は以下の通りとなっていました。

やや古いデータですが、Wikiによると1位のクロンバッハは売上げもトップとなっています。


このクロンバッハは日本でも売られているようですが、ドイツではこちらのリンク先にあるようなスモール缶で売っているのは見たことがありません。ドイツの缶ビールは500mlが標準で1本90セント(昨今の円安でも120円)くらいです。あまりにも安くておいしいので、いつも家の中に大量に買い置きしています。

クロンバッハ(Krombacher)|イオングループのリカー専門店「イオンリカー」 (aeonliquor.jp)

 

国民一人当たりのビール消費量の国際比較をみると、ドイツは当然ながらかなりの上位であり、世界第5位(一人当たり年92.4リットル、日本人の2.6倍消費)となっています。

国別ビール消費量(年間) | 市場データ・販売概況 | キリンホールディングス (kirinholdings.com)

 

個人的には「毎日がビールの日」なので、4月23日に何ら特別感はありませんでしたが、普段お世話になっているドイツビールにちょっとだけ思いを馳せてみました。。。。

20220423 日本だけコストプッシュ型

ウクライナ危機の長期化に加えて、中国ゼロコロナ政策に起因するコンテナ目詰まりのため、グローバルベースでインフレ圧力が一段と高まっています。もともと日本経済は資源・エネルギーの大半を輸入に頼っているため、それらの価格上昇と円安の組み合わせに弱いのでとても心配です。

米独日におけるインフレ(3国ともターゲットは2%)と賃金の最近の関係は以下の通りとなっています。

       総合 / コアインフレ率      賃金上昇率
 米国    +8.5% / +6.5%(2022/3)   +5.7%(2022/3)
 ドイツ   +7.3% / +3.4%(2022/3)   +1.7%(2021/11)
 日本    +1.2% / ▲1.6%(2022/3)  +1.2%(2022/2)

米国とドイツにおけるインフレは、総合、コア(除く食品・エネルギー)ともターゲットの2%を大きく上回っており、ディマンドプルの側面が強く滲み出ています。特に米国では、資源高が海外からの所得流入をもたらしており、賃金面からの物価上昇圧力も顕在化しています。

一方、日本では値上げ全般に対する抵抗が非常に強いため、エネルギー主導のコストプッシュ型インフレとなっています。デフレギャップ解消の道のりは遠く、賃金面からの物価上昇圧力はほとんどありません。2022年4月以降のインフレは、昨年の携帯電話通信料引き下げの影響(▲1.5%程度)が徐々に剥落することで相応に上昇するはずですが、日銀が利上げに踏み切るような力強さには到底至らないと思います。

これ以上の「悪い円安」は困るので、為替介入や金融政策オペ以外で何とかブレーキをかけたいということであれば、日本にとっては高すぎてそもそも無理のあった「2%」インフレターゲットをいっそこの機会にちょっと下げてみるという、まさに「非伝統的」手法(奇策)にでも打って出てみるしかないように思います。

 

【独訳】

Neben der anhaltenden Krise in der Ukraine nimmt der Inflationsdruck auf globaler Ebene aufgrund des durch Chinas Null-Corona-Politik verursachten Containerstaus weiter zu. Dies ist sehr besorgniserregend, da die japanische Wirtschaft seit jeher für den größten Teil ihrer Ressourcen und Energie auf Importe angewiesen ist und durch die Kombination dieser Preissteigerungen mit einem schwächeren Yen gefährdet ist.

Die jüngste Beziehung zwischen der Inflation (alle drei Länder streben 2 % an) und den Löhnen in den USA, Deutschland und Japan sieht wie folgt aus:

          Gesamt-/Kerninflation        Lohnwachstum
 USA                 +8,5% / +6,5% (2022/3)     +5,7% (2022/3)
 Deutschland     +7,3% / +3,4% (2022/3)    +1,7% (2021/11)
 Japan               +1,2% / -1,6% (2022/3)     +1,2% (2022/2)

Die Inflation in den USA und in Deutschland liegt sowohl für die Gesamtinflation als auch für die Kerninflation (ohne Nahrungsmittel und Energie) deutlich über dem Zielwert von 2 % und hat einen starken nachfrage-gesteuerten Charakter. Vor allem in den USA haben die hohen Rohstoffpreise zu Einkommenszuflüssen aus dem Ausland geführt, und auch von der Lohnseite her hat sich ein Aufwärtsdruck auf die Preise bemerkbar gemacht.

In Japan hingegen ist der Widerstand gegen Preiserhöhungen im Allgemeinen sehr groß, was zu einer energiebedingten Kostenschub-inflation führt. Der Weg zur Schließung der Deflationslücke ist noch lange nicht zu Ende, und von der Lohnseite geht nur ein geringer Aufwärtsdruck auf die Preise aus. Die Inflation dürfte nach April 2022 beträchtlich ansteigen, da die Auswirkungen der letztjährigen Senkung der Mobilfunkgebühren (-1,5 %) allmählich verschwinden, aber ich glaube nicht, dass sie stark genug sein wird, damit die Bank of Japan die Zinssätze anheben kann. 

Wenn die BOJ die weitere "unangenehme Yen-Abwertung" bremsen will, ohne Deviseninterventionen oder geldpolitische Operationen einzusetzen, ist es vielleicht einen Versuch wert, das "2%"-Inflationsziel etwas zu senken, das für Japan von Anfang an zu hoch war, und zwar durch eine "nicht-traditionelle" und "überraschende" Maßnahme.

 

【英訳】

In addition to the prolonged Ukraine crisis, inflationary pressures are further increasing on a global basis due to container jam caused by China's zero-Corona policy. This is very worrisome because the Japanese economy has always relied on imports for most of its resources and energy and is vulnerable to the combination of those price increases and a weaker yen.

The recent relationship between inflation (all three countries are targeting 2%) and wages in the U.S., Germany, and Japan is as follows:

       Overall / Core Inflation   Wage growth
 U.S.              +8.5% / +6.5% (2022/3)      +5.7% (2022/3)
 Germany      +7.3% / +3.4% (2022/3)      +1.7% (2021/11)
 Japan           +1.2% / -1.6% (2022/3)       +1.2% (2022/2)

Inflation in the U.S. and Germany is well above the 2% target for both Overall and Core (excluding food and energy), and contains quite a bit demand-pull character. In the U.S. in particular, high resource prices have brought income inflows from overseas, and upward pressure on prices from the wage side has also become apparent.

In Japan, on the other hand, resistance to price increases in general is very strong, resulting in energy-driven cost-push inflation. The road to closing the deflation gap is far from over, and there is little upward pressure on prices from the wage side. Inflation should rise considerably after April 2022 as the impact of last year's reduction in cell phone communication fees (-1.5%) gradually disappears, but I do not think it will be strong enough for the Bank of Japan to raise interest rates. 

If the BOJ wants to put the brakes on further "bad yen depreciation," without using FX intervention or monetary policy operations, maybe it’s worth test lowering the "2%" inflation target, which was too high for Japan to begin with, namely by taking a "non-traditional" and "surprise" measure.

 

 

20220422 ウクライナ危機で対露全面禁輸とした場合のドイツ経済への影響

掲題について、ドイツ連銀が今月の月報の中で分析結果(ベースライン比でのGDP押し下げ、インフレ押し上げ幅)を発表してくれていますので、その結果を簡単にご紹介します。

Krieg gegen die Ukraine: Energieembargo könnte deutsche Wirtschaft deutlich schwächen | Deutsche Bundesbank

 

前提条件の想定

対露全面禁輸に踏み切った場合の資源価格予想(点線)
~特に天然ガス価格が大きく上昇し、なかなか下がらない

(青色:天然ガス、灰色:石炭、黒色:原油、水色:その他資源、)


①実質GDP

ベースライン比、

2022年:▲1.8%、2023年:▲3.5%、2024年:▲3.4% 押し下げ

(水色:原材料価格、青色:海外需要、灰色:不透明感、黒色:財政出動

 

②インフレ

ベースライン比、

2022年:+1.6%、2023年:+2.1%、2024年:+0.8% 押し上げ

(水色:原材料価格、青色:海外需要、灰色:不透明感、黒色:財政出動

 

20220421 ドイツコロナ状況アップデート

人口で調整した指標で国際比較(青:ドイツ、黄:日本、赤:英国、緑:オランダ)すると、


①新規感染者数

ドイツの新規感染者数はオミクロン2種による2つのピークを越えて、欧州他国比遅れ気味ではあるものの、着実に改善基調をたどっています。

(水準はまだかなり高いながら)州別に見ても全体的な減少傾向が続いています。

 

②死者数

ドイツの死者数は決して低くはないものの、過去のピークからは大きく改善し、以前のような恐怖/危機感はほぼなくなっています。

Corona Zahlen aktuell: Karte für Deutschland + weltweit (morgenpost.de)

 

コロナ規制の国際比較を可能にする、オックスフォード大「厳格度インデックス」の最近の推移(赤:ワクチン未接種者、緑:ワクチン接種者、黒:両者の加重平均/総合)を見比べてみると、以下のように整理できます。

  • 英国、オランダ:年初の早い時期から大胆な規制緩和に動いた
  • ドイツ:ワクチン未接種者に厳しい措置を維持してきたが、最近ほぼ全面緩和
  • 中国:ゼロコロナ政策継続中で、一部大都市でロックダウン断行
  • 日本:中程度の規制を維持したまま特段動きなし
  • 米国:ワクチン接種ステータスによる格差を維持

COVID-19 Government Response Tracker | Blavatnik School of Government (ox.ac.uk)

 

ドイツが大幅規制緩和に踏み切ってから数週間が経過しましたが、再生産数は1.0割れで安定的に推移しており、再加速に転じる気配は今のところありません。

 

ちなみに国立感染研究所(RKI)の英語版日報トップの重要指標一覧はこのような見栄え(まとめ方)になっています。ポイントは以下2点です。

  • 新規感染はまだ高水準ながらも、医療キャパは圧迫していない
  • ワクチン普及は8割の手前でほぼ止まっている
    (今冬に向けたワクチン義務化の展望も開けていない)

https://www.rki.de/DE/Content/InfAZ/N/Neuartiges_Coronavirus/Situationsberichte/Apr_2022/2022-04-21-en.pdf?__blob=publicationFile

 

また、毎週木曜の夕刻に発表されるRKIの週報(ドイツ語のみ)には、ウィルスの種類のシェアが掲載されており、直近はオミクロンが100%、うちBA2が95.3%となっています。

感染力の強いBA2が更に拡大して新規感染者数を押し上げるような展開はもはや考えづらくなっていると思います。

https://www.rki.de/DE/Content/InfAZ/N/Neuartiges_Coronavirus/Situationsberichte/Wochenbericht/Wochenbericht_2022-04-21.pdf?__blob=publicationFile