日独経済日記

日独間の架け橋となることを目指しています

20240420 週末のBloombergより

youtu.be

◆パウエル議長の利下げ前のめり度撤回で「Hiher for Longer」が再びキーワード化。一部には次の一手が利下げではなく利上げなのではないかという声(UBSなど)も上がり始めている。
◆もうすぐ利下げ、と期待して積み上がった米債のロングが逃げ遅れており、10年4.75%を上回ってくると、ロスカットの売りで5%をつけにいってもおかしくない状況か。
◆本来非常にsmart(賢明)な人たちがこれほど長期にわたって読み違えたことはあまり例がない
ウクライナイスラエル、台湾支援のための追加財政出動(総額950億ドル)や最近のコモディティ価格上昇は追加的インフレ上昇圧力となっている。
◆TIPS(インフレ連動債)の人気化はインフレヘッジニーズの高まりを象徴している。
◆仕上がり利回り重視でタイトなスプレッドを許容してきたクレジット投資家も、これからは苦しい局面になるかも。HYで8%超は一見魅力的でも、米国債5%なら色褪せる。
◆10年5%に向けて押し目買いで立ち向かう人たちはまだいるだろうが、インフレ鎮静化がますます不安視される中、ボラ(move index)も上がり始めており、要厳重警戒。
地政学リスクの高まりによる質への逃避買いより、ボラのリスクの方が大きくなる可能性があり、リスクオフに備えて単純に米国債買い、となりにくい。
安全かつ利回りが高いエージェンシー債や、高利回りかつ変動金利のAAA-CLO/レバローン/それらのETFなどの方が魅力的
長期的に見て実質金利が魅力的であることだけは間違いなさそう。ボラが高まる中、トレードタイミングを測るのは極めて難しいので、ジタバタせず実質金利を取りに行くべき
◆逆イールド環境下でイールドを取るためには、ある程度クレジットリスクを取らざるを得ないが、長期にわたる低金利環境下でレバレッジがやや過大になった状態で迎えるファイナンスのリスクを個別にしっかりと見極めることが非常に重要。幸い景気は悪くない。

youtu.be

◆現時点でまだ可能性は低いが、次に警戒すべきは(戦争拡大より)ホルムズ海峡の封鎖
◆これ以上米国のウクライナ支援を遅らせるのは危険かつ無責任。ロシアに勝って領土を奪回できる可能性は低いが、ロシアに更に押し込まれるようなことがあってはならない。
地政学リスクが高まる中、トランプが米国の既定路線をリシャッフルするのは大変なリスクだが、一方で米欧のウクライナ支援に対する危機感の高まり、日韓関係の修復、インドの政治経済面での台頭など、世界の安定に寄与する方向の明るいニュースもある。
イスラエルのイランへの反撃は非常に限定的で、イランも冷静に反応している。株価を押し下げているのは、地政学リスクよいうよりはFEDの「利下げなし」への方向転換か。
金利が思ったほど下がらないのであれば、株価のバリュエーションも当然下方修正が必要になる。景気が強い/企業業績が特段悪化したわけではない中での今回の株価下落は、継続的下落につながるものではないように思われる
◆商業用不動産価格は全体平均で概ねピーク比▲20%(オフィス▲35%~工場用UNCH)。今局面で予想される下落はほぼ出つくしている
◆Maturity Wallは過去にも何度も注目されてきたが、債務者が必要に応じて先手を打つので、実際に問題化したことはこれまで一度もない。今局面でも過度の悲観は禁物。
◆不動産価格がボトムを打ったと思えばすかさず出動してくる巨額の待機資金が待ち構えているので、出遅れるよりはやや先走った方が良い。。
◆苦境が続くオフィス市場でもESG重視の物件に対しては需要が高い。データセンター需要は引き続き高水準。
◆EVを高所得者層以外が購入し始めるフェーズになり、EVの高価格がネックになってきている。所得が相対的に低く、価格に敏感な買い手はプラグインHVを選んでいる。
◆今プラグインHVを買っている人たちも次はEVを真剣に検討する可能性が高い。その際、価格に加えて充填インフラの量的・質的充実がポイントとなる(長距離を走るので欧州より米国で特に重要)。
◆EV購入インセンティブとしては、直接的な補助金や減税よりは、炭素税のように市場メカニズムを働かせられるものの方が良い。

 

<日独経済日記>

www.youtube.com

20240420 ドイツで着実に前進する難民労働力戦力化

ドイツ連邦雇用庁のデータによると、ドイツで受け入れた難民が着実に労働力として戦力化し始めており、人手不足問題の緩和に寄与している模様。

https://statistik.arbeitsagentur.de/Statistikdaten/Detail/Aktuell/arbeitsmarktberichte/faktenblatt-asyl8-ukr/faktenblatt-asyl8-ukr-d-0-pdf.pdf;jsessionid=3D4381A6BC8D160A73B56C4C3FAE50D5?__blob=publicationFile&v=1

 

①難民の労働力人口(15~65歳)
 TOP8:155万人(うち女性37%) ウクライナ:84万人(64%)

TOP8~難民出身主要8か国:アフガニスタンエリトリアイラク、イラン、ナイジェリア、パキスタンソマリア、シリア

 

②うち、求職者数
(上記との差分は、働く意思と能力~語学/スキル研修中など)
 TOP8:50万人 ウクライナ:42万人

 

③毎月の失業者の就業化件数

 TOP8:13千人 ウクライナ5千人(直近今年3月時点)

 

④就業者数(戦力化に成功している総数)

         就業総数     うち社会保険対象    

 TOP8:     65万人(①の42%)  65万人

 ウクライナ:   22万人(①の25%)  17万人

(ドイツ全体:  4,581万人         3,495万人)

 

⑤主な就業業種

         男性   /    女性

 TOP8: 車修理・販売、製造業/ヘルスケア、車修理販売

 ウクライナ: 建設業、製造業/ホテル・レストラン、社会福祉

 

<日独経済日記>

www.youtube.com

20240419 露スパイ2名逮捕についてのドイツメディアの報道ぶり

Bundesinnenministerin Nancy Faeser (SPD) gibt in Saarbrücken ein Statement zur Festnahme von zwei mutmaßlichen Agenten mit Verbindung zu Russland ab. Vor ihr zahlreiche Mikrofone.

ウクライナへの軍事支援を妨害するため、ドイツ国内で爆発物を準備するなどロシアのためにスパイ行為をしていた疑いで、ロシア系ドイツ人の男2人が逮捕されたことについてのドイツメディアの報道ぶりは以下の通り(写真はフェーザー内相の記者会見)。

  • これらのロシア工作員は、将来の攻撃に備えてドイツ国内の軍事施設(ウクライナ兵の訓練場など)や各種インフラを偵察していた模様。
  • これはロシアの侵略が新たな段階に入っていることを意味する。ロシアはドイツ国内で単なるマイクロフィルムのコピーや電話盗聴にいそしんでいるのではなく、物理的破壊工作を用意し始めている。
  • ロシアの戦争はウクライナ国内に留まっていないことが改めて示された。
  • 幸い今のところドイツ国内での破壊工作は阻止できているが、サイバー攻撃などと併せたハイブリッド攻撃のリスクは今後高まる一方だ。
  • 西側諸国としては、総合的安全確保のための投資(スパイ対策、ITおよび重要インフラのセキュリティ確保)を最優先し、耐性を高め続けなければならない。
  • 発覚したスパイ事件は、ウクライナの自衛能力だけでなく、西側諸国自身の自衛力と政治的安定性をも脅かしている。
  • プーチンが志向しているエスカレーションは非常に危険である。ロシア工作員がもし本当にドイツ本土の軍事インフラへの攻撃を実行するなら、これは冷戦当時よりはるかに悪い状況だ。
  • 偽情報キャンペーンやサイバー攻撃によって、プーチンすでにドイツに対して一種の戦争を仕掛けている
  • 偽情報に踊らされて国内が分断されているようではいけない。プーチン大統領をいたずらに刺激しない方がいいなどと主張する宥和主義者は、考え直した方がいい。ドイツが武力攻撃されつつある時にドイツが何をすべきかは明白なはずだ。
  • この攻撃では最も準備が整っていない国が狙われる。長年にわたる親ロシア政策、スパイ活動への無警戒、そしてプーチンの危険性軽視は、ドイツをこの上なく脆弱にしている。
  • ロシアによるハイブリッド攻撃対する十分な備えがドイツにあるとはとても思えない。ベルリンの壁崩壊(冷戦終結)以降、ドイツにおけるスパイ対策は軽視され、慌てて取り組み始めたのはここ数年になってから。
  • ドイツ国内におけるスパイ対策を担当する国内諜報機関憲法擁護局の人員不足は深刻で、技術面でも立ち遅れている
  • 何はとにかく、まずはウクライナが常にロシアの攻撃に対抗できるようにしておくことが最も重要。ウクライナ支援の手を緩める理由はどこにもない

 

<日本語報道例>

www3.nhk.or.jp

 

<日独経済日記>

www.youtube.com

20240418 ドイツの気になるデータ5選(受注残、投資計画など)

①製造業受注残(2月)~前月比▲0.2/前年同月比▲5.8%とかなり減少してきたものの、月商の7.0か月分と依然高水準。低調な新規受注のバッファとなっている。

https://www.destatis.de/DE/Presse/Pressemitteilungen/2024/04/PD24_159_421.html

 

②ホテル・レストラン売上(2月)~名目ベース(薄青)では前月比+1.2%/前年同月比+1.8%とかなり健闘しているものの、実質ベース(濃青)では前年同月比▲1.1%、コロナ前比▲14%とまだまだ凹んでいる。

https://www.destatis.de/DE/Presse/Pressemitteilungen/2024/04/PD24_158_45213.html

 

③ドイツ企業の今年度投資計画(ifo調査)~資本財と中間財に対する世界的な需要低迷と、経済政策をめぐる不確実性のため、多くのドイツ企業が投資決定を先延ばし

https://www.ifo.de/en/facts/2024-04-18/german-companies-plan-cut-investment-2024

 

④インフルエンザ流行度合い~週あたり新規感染者数(赤線)は人口の4.7%(うちコロナは0.1%以下)とほぼ平年並みまで低下。一時700万人いた病欠者の390万人への減少は景気サポート要因

https://influenza.rki.de/Wochenberichte/2023_2024/2024-15.pdf

 

⑤金融システム不安モニタリング~米欧商業用不動産問題を抱える炭鉱のカナリア的存在:ドイツファンドブリーフ銀行(PBB)の株価は、2月の安値からやや回復後横ばい推移。今のところ特段きな臭さはない

https://www.finanzen.net/aktien/pbb-aktie

 

<日独経済日記>

www.youtube.com

20240418 ドイツ連銀月報経済分析部分のエッセンス

https://publikationen.bundesbank.de/publikationen-de/berichte-studien/monatsberichte/monatsbericht-april-2024-928516?article=kurzberichte-928518

 

本日発表されたドイツ連銀月報(今回からWEB上で見やすくなっている/ドイツ連銀がどの指標をどんなグラフで見ているかがわかる)の経済分析部分(Kurzberichte)のエッセンスを以下紹介する。

 

鉱工業生産、建設生産、輸出が思ったより強かったため、実質国内総生産 (GDP
)は第 1 四半期にわずかに増加した可能性がある(これまでは「小幅マイナスの感触」としていた)。但し、期待外れの個人消費を含め、まだまだドイツ経済の足腰は弱い(安心できない)。前期比プラスが第2四半期も続くかどうかはわからない。 全体として、ドイツ経済には依然として持続的な改善は見られない。

Bruttoinlandsprodukt in Deutschland

マーケットでは、Q1GDP(4/30発表)に対するドイツ連銀の感触が、マイナスからプラスに転じたことが大きく採り上げられている。

www.bloomberg.co.jp

 

●鉱工業生産は思ったより強めだったが、エネルギー集約型産業の低水準からの反発が中心で、裾野に広がりがない(上)。

製造業受注は(下)は大口特需(エアバス関連)を除くと軟調継続。
建設生産は暖冬のお陰で2月強かったが、受注は弱いままで苦境を脱したとは言えない。

【筆者注】IMFが指摘する通り、製造業の生み出す付加価値(GDP)は鉱工業生産の見かけより強いので、こんなに弱そうな見栄えの生産でもGDPはプラスになる模様。また、月商の約7か月分の受注残が足元の弱い新規受注に対するバッファにもなっている)

Deutsche Industrieproduktion und industrieller Auftragseingang

 

●不景気にもかかわらず、医療・介護、公共サービス、物流、サービス業、エネルギー/水道、教育分野を中心に就業者数(青線)の増加継続今後の失業率上昇リスクは限定的
【筆者注】失業率(黒棒)の上昇の多くが、ウクライナ難民(失業率5割程度)カウント開始(2022年6月)によるもの。

Erwerbstätigkeit und Arbeitslosenquote in Deutschland

 

●CPIはここまで順調に低下。4月まではベーシス効果(前年同月の水準が高い)のため前年同月比が低下して見えやすい。イースターが前年に比べて早かったため、旅行サービスの大幅な値上げが今年4月に起こる可能性も低い
しかし、5月以降はこれまでのベーシス効果の剥落、最近の原油/ガス価格の上昇、高い賃上げなどの押上げ要因により、インフレが上昇するリスクがある。

Gesamt- und Kerninflation in Deutschland

 

<日独経済日記>

www.youtube.com

 

 

20240418 ドイツ駐在ビジネスパーソン支援ツール

●ドイツ駐在員幹部向けアドバイス
「ドイツニュースダイジェスト・ビジネスコラム」

www.newsdigest.de

 

●ドイツ人同僚(幹部)とのビジネス雑談ネタ集「YouTube」(日本語/ドイツ語)

www.youtube.com

 

●ドイツのオフィスでのサバイバルドイツ語

dateno.hatenablog.com

 

●WEB翻訳を活用して独力でドイツ語ニュースをチェックする方法

dateno.hatenablog.com


●私の情報発信総合ポータルサイト「note」

note.com

 

●(本社からの要人出張受け入れ直前などに)ドイツ経済について短時間でざっと理解したい時「ドイツ経済直近断面 / note」

note.com


●最強のフリーペーパー「ドイツニュースダイジェスト」トップ

www.newsdigest.de

 

20240417 フランクフルト長谷部誠選手(40)が今季限りで現役引退

サッカーの元日本代表主将で、ドイツ1部リーグ、アイントラハト・フランクフルトに所属する長谷部誠(40歳)選手が本日(4/17)、今季限りでの現役引退を表明し、ドイツ主要メディアもさっそく本件を(以下の通り)大きく報じている。

<ドイツ語報道>
ブンデスリーガで383試合に出場。外人選手としては歴代3位。
●模範的プロとしてフランクフルトの若手育成に引き続き関与することは、フランクフルト/ドイツにとっても朗報。

www.tagesschau.de

www.bild.de

www.t-online.de

www.sportschau.de

www.kicker.de

www.hessenschau.de


<日本語報道>

www.soccer-king.jp

 

<日本人ブンデスリーガ一覧>
週末の対シュトゥットガルト戦(結果的には0-3で敗北)での先発出場に続いて、今日急に記者会見だったので、多くの人が「引退」を予感していた。


<日独経済日記>

www.youtube.com